「やさしすぎる上司」が有望な若手を退職に追い込む
部下が「変わりたい」と思う過程を読み解く
人が変化を受容するまでに4つ(否定・抵抗・探求・決意)の心理的フェーズがあります。特に最初の段階で、部下が上司から言われたことに対し、否定的な態度を取ったり、簡単に承服せずに抵抗の姿勢を見せたりする場合があります。この「否定」と「抵抗」のフェーズをいかに乗り越えられるかが重要です。 1つめのステップは、「否定フェーズ」。 厳しいことを伝えられ、「予期せぬ変化」や「望まない変化」を求められて、いきなり「心を入れ替えて頑張ろう」「はい、わかりました。私は変わります」と、すぐに受け入れられる人は稀で、「自分には関係ない」「自分は変わる必要がない」という否定的な反応がふつうです。 上司としては勇気を出してメッセージを伝えた結果、部下の反発や不機嫌な様子を見ると不安になると思いますが、逆に、そうした反応を示してくれたほうが、「上司のメッセージが相手に伝わった」と思うようにしましょう。 2つめのステップは、「抵抗フェーズ」。 自分の置かれている状況や変わらなければいけない現実を突きつけられた部下は、理論的には理解しても感情的には納得していません。 特に、「自分はできている」「このやり方でやってきてうまくいっている」など、自分を過大評価している人は、会社の期待に応えられていない現実を目の前にしても、「自分の責任ではない」「自分は被害者だ」「上司が間違っている」と他責的な考え方になります。 抵抗フェーズに入ったら、上司は部下の声(意見・不満・怒り・不安)にとことん耳を傾ける傾聴の姿勢が重要です。 上司が真摯に話を聴いてくれたことでネガティブな感情が落ち着き、上司に対する信頼感が高まると、「恩を受けたら相手にも返したくなる」という心理効果(「返報性の原理」)が働き、ようやく「では、これから自分はどうすればよいのか」と「予期せぬ変化」や「望まない変化」を受け入れる心理になります。 「否定」と「抵抗」を乗り越えられると、部下に変わりたいという意思が芽生えるため、その後の具体的な方法を考える「探求」フェーズ、変わるための方法を実践していく「決意」フェーズへ前向きに移行できるようになります。