道警でまた不祥事 元最高幹部「『事件でっち上げ』体質変わっていない」
覚せい剤や拳銃に絡む北海道警察の違法捜査を題材にした映画「日本で一番悪い奴ら」の公開(6月25日)が迫る中、道警として最悪のタイミングで薬物捜査に関連した現職警察官の不祥事が発覚した。覚せい剤密売の仲介者と共謀して虚偽の調書をねつ造したとして、道警本部に勤務する警部補が22日に逮捕されたのだ。元道警釧路方面本部長の原田宏二氏は「実績を挙げるためには事件をでっちあげてでも――という体質は何も変わっていない」と指弾した。(フリー記者・本間誠也)
逮捕の警部補「過去にも証拠偽造」
証拠隠滅(証拠偽造、偽造証拠使用)と地方公務員法(守秘義務)違反容疑で逮捕されたのは、道警本部薬物銃器対策課警部補の早坂洋平容疑者(38)。 報道などによると、早坂容疑者は昨年4月、自らのS(スパイ)である覚せい剤の密売仲介人の男と共謀し、別の50代の男が「覚せい剤を所持しているのを目撃した」という虚偽の供述調書を作成したほか、50代男に対する捜査情報をSの密売仲介人に漏らした疑い。捜査情報を漏らすことでSを守ろうとしたとされる。 この虚偽の供述調書によって50代男は家宅捜索を受けた際、覚せい剤所持容疑で現行犯逮捕されている。早坂容疑者は「過去にも密売仲介人の男と証拠を偽造したことがある」と余罪についても供述しているという。
全国で虚偽供述書「公文書への甘い認識」
「警察官の供述調書に対するコンプライアンスの欠如が浮き彫りになった事件」――。 原田氏は今回の事件をそう批判した上で、「信じられないでしょうが、Sと協力し合えば事件なんてでっちあげられるんです。多少の違法行為に及んでも実績を挙げれば認められる、許されるという誤った考えがまだまだ組織内に巣くっているのでしょう」と嘆いた。 早坂容疑者が約10年にわたって薬物捜査を手掛けてきたことにも着目し、「とりわけ仕事が覚せい剤の摘発に特化される対策課の捜査員になれば、他の事件を挙げても評価はされません。Sと共謀し調書をねつ造してでも薬物で実績をつくらねば、との思いが強まっていったのでは」と推測する。 「今回の事件は早坂容疑者の逮捕で終わらない」と原田氏は話す。「早坂容疑者のSの虚偽の供述調書をもとに過去に逮捕された人たちは、違法手続きで収集された証拠で逮捕されたのだから、証拠能力なしとみなされて全員無罪になる可能性もある」と指摘した。 供述調書の偽造に絡んで、道警では昨年10月にも銃器捜査の関連で札幌市内署の警部補が懲戒処分を受けた。こうした公文書偽造(虚偽供述書)などで懲戒処分を受けた警察官は全国でも相次いでいる。 原田氏は「氷山の一角」としながらも、警察庁の公表データでは昨年までの過去3年間で計104人に上る。「背景にあるのは公文書に対してのずさんとも言える極めて甘い認識です」と強調した。