「令和の米騒動」とは何だったのか 政府備蓄米は放出されず、米が消えた夏 そこから私たちは何を学ぶべきなのか
2024年8月、国内のスーパーから米が消えた。入荷してもすぐに品切れしてしまうため、店頭では購入制限がおこなわれた。SNSにはお米が消えたスーパーの食品棚の写真が並び、マスメディアも連日報道した。(食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美)
「食料安全保障の要」の米がない
農林水産省の公式サイトには、米について次のように書かれている。 =========================== 「お米の自給率はほぼ100%で、我が国の食料自給率に占める割合も大きいです。 日本人にとってお米は食料安全保障の要とも言えます」 =========================== その「食料安全保障の要(かなめ)」であるはずの米が、スーパーから消えた。 農水省は、米が品薄になった理由を次のように説明している。 =========================== (1)2023年産米の作況指数は「平年並み」でも、高温・渇水の影響で白未熟粒(しろみじゅくりゅう)が発生したため、精米後に白米として残る割合が90.6%と過去10年で最低だった。 (2)パンや麺などと比べて値上がりがゆるやかだったため、米の需要が10年ぶりに増えた (3)新米が本格的に出まわる前の端境期で在庫が少なかった (4)南海トラフ地震や台風に備えたまとめ買いの動きが出た (5)お盆休みの影響で物流が滞った ===========================
2割がパニック買いするだけで食品は消える
新型コロナの第1波でパニック買いが発生し、スーパーの棚から即席めん、パスタ、冷凍食品などが消えたことがあった。パニック買いに走ったのは2割ほどの消費者だったが、食品棚は空っぽになった。 今回の米騒動では、スーパーでの米の販売数量が対前年同期比で、南海トラフ地震に備えるよう呼びかけのあった8月8日前後に38.8%増加、台風10号上陸前の8月19日~25日にかけて48.6%増加したという。米が消えるのも無理はない。 政府と農水省は「米の需給がひっ迫している状況にはなく、十分な在庫量は確保されている。今年の米の生育状況は順調で、すぐに新米が出まわりはじめる。まとめ買いなどはせずに、必要な量だけ米を買い求めていただきたい」とアピールしていた。 しかし、農水省が卸売業者に円滑な流通を要請しても、スーパーの米コーナーは空っぽのまま。ようやく入荷した2024年産の新米にはびっくりするような価格がついた。