「令和の米騒動」とは何だったのか 政府備蓄米は放出されず、米が消えた夏 そこから私たちは何を学ぶべきなのか
備蓄米が放出されなかったのはなぜか
国が「食料安全保障の要」としている米が、ある日突然、入手できなくなってしまうというのはどういうことか。日本の食料安全保障とは、そんな薄氷の上に立たされていたのだろうか──。 30年前の「平成の米騒動」の教訓をもとに政府備蓄米が用意されており、今回の騒動で放出を求める声もあった。しかし、農水省は「米の需給や価格に影響を与える恐れがあるため慎重に考えるべき」と応じなかった。 そもそも備蓄米とはどんなものか。 食糧法では、10年に1度の不作が2年連続しても対処できる量として、政府は100万t程度の米を備蓄しておくことになっている。毎年20万t前後の新米を国費で買い入れ、5年間保管するため、備蓄量は常に約100万t(2024年6月末時点の備蓄量は91万t)。5年間持ち越した古米は入札を経て飼料米として販売される。 2024年5月に改正された「食料・農業・農村基本法」で、「食料安全保障」は「(将来にわたって、)良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態をいう」と定義されている。 この夏、食料自給率100%の米を、品切れ、または価格の高騰のため入手できなかった人がいるということは記憶しておこう。 =========================== 【筆者・注】 岸田・前総理から指示があり、こども食堂など支援団体への備蓄米の無償交付がおこなわれる。9月2日から、これまでの農林水産省及び9カ所の地方農政局等に加え、都道府県の県庁所在地等にある農水省の地域拠点51カ所全てに交付申請窓口を新規に開設し、通年交付申請ができるようになった。 ===========================
実は大量廃棄されている米
品薄の裏で、まだ食べられるにもかかわらず、米が大量に廃棄されていることも忘れてはならない。 神奈川県相模原市にある日本フードエコロジーセンターでは、首都圏にある百貨店、スーパー、コンビニなどの小売りや食品工場から出る食品ロスを、1日におよそ40t受け入れ、豚の飼料に加工している。 運び込まれる食品ロスの2割にあたる約8tが米飯だ。お茶わん1杯のご飯は約150gなので、毎日捨てられている8tの米飯というのは5万3333杯分のご飯に相当する。米が消えた夏に、これだけのご飯が無駄にされているのはどういうことなのだろう。 またスーパーには、賞味期限のない米の鮮度は精米時期を基準に判断し、精米後1カ月強で商品棚から撤去する商慣習がある。 撤去された米は、筆者がスーパー5社に確認したところ、「廃棄」「従業員販売で安く売る」「フードバンクに寄付」「納入業者に返品」ということだった。 =========================== 【筆者・注】 精米は、JAS法および食品衛生法では生鮮食品と扱われ、賞味期限の表示義務はない。これまで「精米年月日」が表示されていたが、食品ロス削減や物流効率化を目的とし、2020年3月27日からは「精米時期」(「○月上旬/中旬/下旬」など)と表記することになった。 ===========================