健全経営でマネーゲームに参戦せず、モデルクラブのルートンとロザラム 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑧】
外国人オーナーが注入する桁違いの資金力を武器に成功を手に入れたマンチェスター・シティーやチェルシーのようなビッグクラブと対照的に、2023年にプレミアリーグ初昇格を果たしたルートンの経営モデルは中小規模のクラブにとって希望の光となった。財政難もあって一度は5部リーグまで転落しながら、昨年32シーズンぶりに最高峰リーグまではい上がってきた。紆余曲折の過程を知るギャリー・スウィート最高経営責任者(CEO)(60)は「収入以上の支出をしない。そうすれば財政面が安定し、ピッチ上の成功につながる」と急成長の秘訣を語る。(共同通信=田丸英生) 【写真】拝金主義に嫌気をさしたファンは市民クラブを創設「観戦をみんなで楽しむ」地域社会に根差したチームを運営【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑦】
▽勝ち点30剥奪の厳罰 1980年代は1部リーグの中堅クラブとしての地位を固め、1988年にはリーグカップ優勝も果たした。ところがプレミア発足前、最後のシーズンだった1991~92年に22チーム中20位で2部に降格して新リーグ参入を逃すと、長い苦難が待っていた。2000年代に入ると経営難から破産申請やオーナーの交代を繰り返し、2008年には過去に遡って複数の財務規定違反があったとしてイングランド協会(FA)やリーグから合計で勝ち点30を剥奪される異例の処分を科された。4部リーグだった2008~09年シーズンは大幅な減点が致命傷となって最下位。2部から3年連続の降格となり、プロリーグの1~4部を管轄する「フットボール・リーグ(EFL)」から「ノンリーグ」と呼ばれる5部まで滑り落ちた。 どん底に沈みかけていた2008年にサポーターが中心となってつくられた共同事業体がクラブの経営権を取得し、その中心の一人がスウィートCEOだった。「それまで経営不振で毎日のように借金が増えていたが、ノンリーグに落ちたことはクラブが生まれ変わるきっかけになった。抜け出すまで5年かかったが、それが踏み台となって次の10年間の飛躍につながった」。プロとセミプロが混在するリーグで足踏みした5年の間に経営基盤を一から立て直し、2014年に4部リーグに復帰するとピッチ内外の再建が加速した。 ▽「ノー」と言える強さ