健全経営でマネーゲームに参戦せず、モデルクラブのルートンとロザラム 【プレミアリーグ 巨大ビジネスの誕生⑧】
2022~23年シーズンの収入は約1570万ポンドとルートンより少なく、2部で最小規模のクラブの一つ。監査法人デロイトによると総年俸はリーグ平均の約3分の1にあたる1000万ポンドと24チームの中で最も少ない。直近12シーズンで2部昇格と3部降格を4度ずつ繰り返す「ヨーヨー・クラブ」の典型例だが、チーム運営におけるスタンスは一貫している。ダグラスCOOは「サポーターを満足させること、地域社会に貢献すること、アカデミーで若手選手を育成すること。こうしたテーマと同時に試合に勝って、できる限り良い成績を収めること」と無理に背伸びすることなく、地に足をつけることの大切さを説く。 ▽埋めがたいクラブ間の格差 3部に降格するたびに1年で2部に舞い戻る強さはあるが、そこからもう一段上に進むことは困難を極める。「クラブの予算規模は間違いなく2部リーグで最も小さいため、われわれの3~4倍もの資金力で補強できるチームと対等に戦うのは厳しい。ロザラムに良い選手がいれば引き抜かれ、その穴をすぐに埋めるのは非常に難しい。だから2部と3部を行ったり来たりすることになる」。埋めがたいクラブ間の格差に葛藤をのぞかせる。
戦術面でもプレミアリーグの影響を受ける2部リーグでは、年々ポゼッションを重視するチームが増えているが、その流れに逆行するように昔ながらの英国式スタイルにこだわってチームを構成する。「ロザラムの人々は働き者で、ポゼッションやテクニックよりもスピードやフィジカルを生かした愚直なサッカーを好む。それこそがクラブのアイデンティティーであるということを8~9年ほど前に確認し、そのスタイルに合う選手を獲得してきた」。前職で英会話学校に勤務し、日本に12年住んでいたダグラスCOOは以前から日本人選手の獲得にも興味を示しているものの、チームの戦術に合うタイプが少ないこともあって実現していない。 プレミアリーグに初挑戦したルートンは冬の移籍市場で日本代表DF橋岡大樹が加入したが、20チーム中18位で目標だった残留を果たせなかった。ロザラムは2部でシーズンを通して低空飛行を続け、24チーム中の最下位で5試合を残して早々に降格が決まった。ともに資金力が成績に反映されて残酷な結果を突き付けられたが、終わりが見えないマネーゲームには参戦しないというクラブの確固たる方針が揺らぐことはない。