「介護事業者」の倒産が急増 過去最多を上回るペース
コロナ禍、人材獲得、物価高の三重苦で「息切れ」が加速
2024年1-8月「老人福祉・介護事業」の倒産調査 長引く人手不足とコロナ禍のダメージ蓄積、物価高など、厳しい経営環境が続く介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産増に歯止めがかからない。2024年1-8月の「介護事業者」倒産は114件(前年同期比44.3%増)で、介護保険法が施行された2000年以降、同期間最多の2020年(85件)を大幅に上回った。現状のペースでは年間170件超が見込まれ、年間最多の2022年(143件)を大幅に更新しそうだ。 2024年1-8月の介護事業者の倒産は、改定で基本報酬が引き下げられた「訪問介護」が55件(前年同期比25.0%増)、コスト増の負担が重いデイサービスなどの「通所・短期入所」が35件(同45.8%増)、競争が激しい「有料老人ホーム」が11件(同175.0%増)と、いずれも同期間で過去最多を記録した。 倒産の増加要因は、複合的な要因が重なっている。倒産した114件のうち、「販売不振」(売上不振)が82件(構成比71.9%)と最も多く、次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が11件(同9.6%)と業績悪化が8割超を占めた。業績は新規参入や大手業者との競合に加え、人手不足や物価高の影響から回復が遅れている。特に、コロナ禍の影響が残る関連倒産が42件(前年同期34件)と大幅に増加しており、コロナ禍で疲弊した「息切れ」倒産も目立つ。今後、訪問介護事業者の報酬引き下げによる「あきらめ」倒産増も懸念されている。 倒産した114件の約9割(構成比87.7%)を個人企業他を含む資本金1,000万円未満が占める。また、従業員10人未満も8割(同80.7%)と、事業規模の大半は小・零細事業者が占めている。 一方で、負債総額は1億円以上が27件(前年同期比107.6%増)に倍増し、中小事業者の負債が膨らむ傾向にあるほか、中堅企業の倒産も散発している。