イタリア料理の神髄とは? 世界的三つ星シェフの答えは「ブルガリ ホテル 東京」に
■「本物」を提供する空間が求められる
「かつて自分がいた世界はピラミッド構造で、非常に厳しい上下関係があった。しかし、ロミートシェフは、自分に水平に接してくれる。すると、自分も若い料理人やスタッフに同じように接することができる。例えば、ミスは誰にでもあり、起こり得ること。だから、なぜそうなったか原因を突き詰め、一緒に解決し、2度と起きないようにする。ピラミッド構造の組織では、このようにはいきません。シェフの姿勢がこうしたところにも影響している」とアロイシオさんは指摘する。ハイブランドのホテルであるにもかかわらず、「イル・リストランテ ニコ・ロミート」には肩肘張らない空気が流れる。 最後に、ファインダイニング(高級レストラン)での「ラグジュアリー」をどう考えるかについてロミートさんに聞いた。「ラグジュアリーとは『唯一性』というものがある限り、存在し続けるものだろう。非常に限られているが、最高級のダイヤモンドのような存在はどの世界にもある。真のラグジュアリーは『本物』を体験するということ。今の時代、人々はそうした『本物』を提供する空間としてファインダイニングを必要としていると思う」 文:メレンダ千春(ライター)
メレンダ千春
東京生まれ。アロマセラピスト。幼少期をロンドン、ニューヨークで過ごし、欧米料理やそこに根付く移民の食文化に影響を受ける。出版社勤務を経て独立。著書に『TOKYO 世界の絶品スイーツめぐり』(日経ナショナル ジオグラフィック)。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。