イタリア料理の神髄とは? 世界的三つ星シェフの答えは「ブルガリ ホテル 東京」に
■料理は「シンプルで、ピュア」の繰り返しで成熟
ロミートさんが大切にするのは「シンプルで、ピュアであること」だ。食材一つひとつに極限までこだわり、その神髄を引き出そうと努力を重ねる。「野菜をはじめ、食材に対するあまたのリサーチ、実験を繰り返し、複雑極まりない過程を経て、ようやく最後にシンプルさにたどり着く。食材をリスペクトし、複雑であることを解決して、本当にピュアなものに到達する。それを繰り返すことで料理が成熟していく」 その哲学が端的に表れた料理の一つが、世界7カ国で展開する「イル・リストランテ ニコ・ロミート」でランチ、ディナーともに最初の一皿として出てくる「ベジタブル アブソリュート」だろう。黄金色に輝き、美しく澄んだこのスープには、何と水を一滴も使っていない。タマネギ、ニンジン、セロリのエキスだけからなるスープなのだ。凝縮された甘みが口に広がり、さらに長く喉に味わいの余韻が残る。単なるスープではなく、野菜そのものを味わっているような一皿である。 動物性脂肪をなるべく使わないことも、シェフのこだわりだ。東京の「イル・リストランテ ニコ・ロミート」の今夏メニューには、宮崎産和牛と国産ブドウを合わせた料理が加わったが、その絶妙なバランスに引けを取らず印象的なのは、付け合わせのマッシュポテト。驚くほどクリーミーでありながら、材料はジャガイモ、水、エキストラバージン・オリーブオイルのみ。バターや生クリームは用いない。濃厚な味わいを引き出しているのは、ジャガイモから抽出されたエキス。「こうすることで、食材そのものの風味がはっきりと引き出される。それが深くお客様の心に刻まれ、インパクトが強い料理になる」 歴史あるハイジュエラーとしての蓄積に裏打ちされたイタリアのコンテンポラリーなスタイルを提案する「ブルガリ ホテル」のメインダイニングの監修をしてほしいとの依頼があったとき、ロミートさんは「同じ価値観を共有している」と感じたという。「ミラノのホテルにはお客として訪れたことがあり、デザインからおもてなしまで、プロに徹した唯一無二の存在であると思った。ブルガリのジュエリーと同じです。ブルガリのマネジメントが『ラグジュアリーな料理とは何か』と尋ねたとき、私は即座に『スパゲティ・アル・ポモドーロ』(トマトのスパゲティ)だと言った。それで話は決まった」