「憧れを売っている」青いヤマハ、インドのZ世代を直撃するプレミアム戦略の躍進
こうしたプレミアム戦略成功の背景には、ラインアップの先鋭化だけでなくディーラー改革を中心としたマーケティング戦略があった。
◆ブランドロゴは“YAMAHA Racing”、ヤマハブルーで「憧れを売る」
もっともわかりやすいのがヤマハのブランドロゴだ。日本では馴染み深い赤の「YAMAHA」ではなく、青をベースとした「YAMAHA Racing」をブランドロゴに掲げた。二輪のF1とも言われるMotoGP人気にあやかったもので、ヤマハ=スポーツのイメージを強調する。この「ヤマハブルー」を軸に、インド人口の30%を占めるZ世代をターゲットとした上で、2030年には5000万人を超えるといわれるこれからの免許取得世代に向けたアピールもおこなう。
「我々ヤマハは、オートバイではなく、憧れを売っているんです」とヤマハモーターインディアグループの知花栄進会長は語る。潜在顧客層対し、カッコいいヤマハ、いつかは乗りたい憧れのヤマハを刷り込むことで、将来のファン拡大につなげる。
ブランドの発信基地として重要な役割を担うのがディーラー店舗だ。現在、都市部を中心にヤマハブルーを押し出した新店舗「ブルースクエア」のオープンを進めている。10月末現在で全国720店のうち400店がブルースクエアに、2024年末には450店まで拡大する予定だという。さらに2027年までには全900店舗まで拡大した上で、すべてがブルースクエア店となる計画だ。
ブルーのライティングで飾られた店舗は、フラッグシップとなる『YZF-R15』や『MT-15』をメインに据え、主力モデルを並べる。所狭しと在庫車を並べる従来型の店舗ではなく、すっきりと洗練されたショールームのイメージだ。日本ではこうしたショールーム型の店舗が増えつつあるが、インドでは珍しい。そしてこのブルースクエアを中心に、カスタマーエンゲージメントを高めるためのイベントの数々をおこなう。
そのひとつが販売店主体のライディングクラブ「ブルーストリークス」だ。インドではツーリング文化がまだ根付いておらず、泊まりがけでの長距離ツーリングもほぼ見られないという。そこで各店舗には顧客との窓口を担う「キャプテン」と呼ばれるリーダーを設置し、月1~2回のツーリングの企画や運営をおこなっている。ほかにもサーキットでの走行も体験できる「トラックデー」も設けるなど、プレミアムな体験を通じてヤマハの魅力を高めると同時に、バイク文化の醸成を図るねらいだ。