脚の「切断手術」をして仲間を救うアリ、ヒト以外で初の発見に研究者驚き、成功率9割超
5本の脚で歩き回るアリたち
「とても興味深い発見です」と語るのは昆虫学者のコリー・モロー氏だ。モロー氏はナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあり、米コーネル大学でアリの研究に取り組んでいる。 「この研究者たちは、切断手術によって生存率が高まることを示しただけでなく、孤立したアリは自分の脚を食いちぎることができず、命を落としやすいことも示しました」とモロー氏はメール取材で述べている。 防衛、子育て、分業に加えて、今回の発見はコロニーで暮らすことのもう一つの利点を示唆している。「仲間に脚を食いちぎられることが、社会生活の利点の新たな例になると誰が想像したでしょう?」とモロー氏は問い掛ける。 切断手術がアリの間でどれくらい一般的かは不明だが、フランク氏らによる予備的な証拠によれば、同じオオアリ属の近縁種も傷を治療するため、互いの脚を切断している可能性がある。氏の研究チームは、アリはけがの治療法や感染症対策としてほかにどのような戦略を持っているのか、アリはどれくらい痛みを感じられるのかなど、この証拠が提起した未解決の疑問にも取り組みたいと考えている。 今回の研究は、少なくともモロー氏にとって、1つの大きな疑問に答えてくれた。 「世界中のアリを集めてきた者として、私はいつもわずか5本の脚で歩き回るアリに驚嘆してきました」とモロー氏は語る。「まさか実の姉妹が脚を食いちぎっていたとは!」
文=Jason Bittel/訳=米井香織