自己投与可能な経鼻インフルワクチンを米FDAが承認、注射タイプとの違いは
米食品医薬品局(FDA)はこのほど、鼻腔に吹き付けるタイプのインフルエンザワクチン「FluMist(フルミスト)」の自己投与、または介護者による投与を初めて承認した。この経鼻ワクチンはA型とB型のインフルを予防するもので、投与対象年齢は2~49歳。米国内では現在、薬局で医療従事者が投与できるが、今後は成人であれば自宅で自己投与することができるようになる。 インフルワクチン接種のために医療機関に行くことが困難な人も多い中、今回経鼻ワクチンの自己投与が承認されたことで柔軟性と利便性が大幅に向上する。加えて、多くの人が注射針に対して恐怖心を抱いているが、経鼻ワクチンは鼻腔に噴霧するため、心理的なハードルがかなり下がる。 では、フルミストは従来のインフルワクチンとどう違うのだろうか。米医療ニュースサイトWebMDによると、以前の研究では、経鼻ワクチンは従来の注射タイプの接種よりも小児で効果があるとされたが、最近の研究では、フルミストと注射タイプの効果は同等であることが示されている。 この2つは、インフルエンザに対する同様の防御をもたらす異なるタイプのワクチンだ。注射によるワクチンは、死んだインフルエンザウイルスから作られ、接種によりインフルエンザに感染することはない。通常、腕の筋肉か3歳未満の子どもであれば太ももの筋肉に注射する。注入されたワクチンは血管が多い筋肉で吸収されるため、理論的には血流に入って免疫反応を引き起こすことができる。 フルミストは、弱毒化した生きたインフルウイルスを鼻に噴霧する。インフルウイルスが気道の粘膜組織に侵入する経路である鼻に吹き付けるため、注射タイプより早く局所免疫を形成する。同薬はインフルウイルスが体に入り込むまさにその場所で侵入をブロックする。 フルミストの対象は2~49歳のみだが、注射タイプは生後6カ月以上の人に打つことができる。経鼻タイプにはさらに多くの制限がある。米疾病予防管理センター(CDC)によると、経鼻タイプのインフルワクチンは、ワクチンに含まれる成分に対して激しいアレルギー反応を示す人、解熱鎮痛薬の一つであるアスピリンを服用している小児および10代の若者、喘息持ちの2~4歳児、免疫力が弱く慢性疾患のある人、妊娠中の女性、脾臓が機能していない人には使用不可だ。 一方、注射タイプは、生後6カ月未満の乳児、ワクチンに含まれる成分に対して重度のアレルギーを持つ人、体の免疫系が神経を攻撃するギラン・バレー症候群にかかったことがある人には接種できない。 どちらのワクチンも一般的に非常に安全で容認されているが、経鼻タイプの方で多くの副作用が伴う可能性がある。成人の場合、フルミストで発熱や喉の痛み、鼻水といったインフル似の症状が起こるかもしれない。小児では、喘鳴(ぜんめい)、嘔吐、筋肉痛が出る可能性がある。注射タイプでは通常、腕や接種箇所が1、2日痛むくらいだ。 結局のところ、最も重要なことはどちらのタイプの予防接種を受けるかを決めることではなく、重症化や入院するような事態を防ぐために実際に予防接種を受けることだ。CDCによると、米国内のインフルによる死亡者数は年間最大5万1000人、入院者数は最大71万人にのぼると推定されている。予防接種は死に至ることもあり得る感染症に対する最善の予防策だ。
Omer Awan