「京都の良質な地下水を損なう」 北陸新幹線小浜ルート、銭湯文化伝える若手社長が危機感
後継者がいない銭湯などの経営を引き継いで次代に銭湯文化を残す活動を展開し、全国的に注目されている「ゆとなみ社」(京都市下京区)の湊三次郎社長(33)に、京都市の地下を巨大トンネルで縦断する北陸新幹線新大阪延伸計画が銭湯にもたらしかねない影響について聞いた。湊社長は「京都の良質な地下水を損ないかねない計画」と強い懸念を示し、日本酒や豆腐など、水と関わりの深い業種の関係者とも手を携えていく必要性も口にした。 【図解】小浜ルートは京都を縦断
―ゆとなみ社が手がける市内の3つの銭湯(梅湯、源湯、鴨川湯)も地下水を用いている。延伸計画のどこが課題か。 「京都の銭湯は、地下水ありきの文化だ。地下深くに(幅)10数メートルのトンネルを掘った時の影響が、誰にどう分かるというのか。市内ではかつて、地下を通る鉄道の工事で水が枯れ、上水に変えた銭湯があると聞いている。マンション建設で、水が一時濁った銭湯もあったという。マンションくらいの工事でも、それだけの影響が出る。酒、豆腐など、地下水で食べるものを作っている人たちにも大打撃になる。良いものを失いかねない計画だ。巨額の費用負担も発生する。財政状況は良くないのに、府と市も負担する。そこも大丈夫なのかと不安に思う」
―京都の地下水の価値をどう考える。 「京都の地下水の質は本当に良い。ろ過しなくても使える。素晴らしい資源を、住民やお客さん、観光客に提供できるのは、京都の大きな武器だ。他の地域では、水が出ても質が良くなかったりする。きれいな地下水がある京都は特殊であり、都会地では京都くらいだ。水が良いからこそ京都だと思う。(延伸推進には)経済合理性という観点もあるのかもしれないが、(水などの)育まれたものが破壊されてよいのだろうか。経済合理性より、(水などの)育まれた価値の方が大きい。京都は水の都であり、京都と地下水は密接な関係にある。僕は京都に住み、銭湯をなりわいにして、水の恩恵を受けている。京都のサウナが良いと言われるのは、水風呂の良さがあるのも一因。掛け流しで地下水を浴びれる良さがある。京都のろ過しなくてもいい水を損なえば、本当に大きな損失だ」