小惑星「2023 FW14」は火星のトロヤ群小惑星の謎を解くカギとなるか
今回、新たなL4トロヤ群として発見された2023 FW14の存在を加えることで、de la Fuente Marcos氏らはエウレカこそが真に原始的な火星トロヤ群小惑星であると考えています。エウレカはカンラン石を豊富に含むタイプ(SI型)ですが、これは(火星とは起源が異なる)小惑星帯の小惑星では少数派です。 一方で、1999 UJ7は小惑星帯によくみられるタイプのXc型です。今回の観測で2023 FW14の分類が判明し、また1999 UJ7よりも精度の高い観測データが得られたことで、1999 UJ7と2023 FW14は火星の誕生時とは異なる起源を持つ、つまり後の時代になって火星に捕獲された小惑星の可能性が高いことが分かります。 では、2023 FW14と1999 UJ7の関係性はどうなのでしょうか?この研究以前にも、1999 UJ7は元々は火星の公転軌道を横断する小惑星であり、約40億年前に火星に捕獲されたという説がありました。今回発見された2023 FW14も、1999 UJ7と同じタイミングで捕獲されたか、もしくは1999 UJ7が捕獲された後に分裂した時の破片なのかもしれません。2023 FW14が1999 UJ7と似ていることとL4トロヤ群に属する約1000万年という期間は同時捕獲説と分裂説のどちらでも説明可能なため、これは新たな注目ポイントとなります。 この説が正しいのかはまだ分かりませんが、いずれにしても2023 FW14は火星トロヤ群に関する大きな謎を解くカギとなるでしょう。 ちなみに、2023 FW14と良く似た仮符号を持つ小惑星「2023 FW13」は、地球の準衛星であることが判明しています。小惑星の仮符号は機械的に割り当てられていて、似ているのは全くの偶然なのですが、大量に発見され続けている小惑星のなかでもそれぞれ滅多にない性質を持つ2つの小惑星の仮符号がたまたま似ているという意味では面白い偶然だとも言えます。 Source Minor Planet Electronic Circular. “MPEC 2023-G87 : 2023 FW14”. (Minor Planet Center) R. de la Fuente Marcos, et al. “Dynamics of 2023 FW14, the second L4 Mars trojan, and a physical characterization using the 10.4 m Gran Telescopio Canarias”. (Astronomy & Astrophysics) Julia de León & Javier Licandro. “Astronomers confirm a new “Trojan” asteroid that shares an orbit with Mars”. (Instituto de Astrofísica de Canarias)
彩恵りり