小惑星「2023 FW14」は火星のトロヤ群小惑星の謎を解くカギとなるか
■「2023 FW14」は観測史上2番目の火星L4トロヤ群小惑星
de la Fuente Marcos氏らの研究チームは、昨年発見されたばかりの小惑星「2023 FW14」に注目し、力学的な解析を行いました。2023 FW14は2023年3月18日に発見され、4月15日に現在の仮符号と詳しい公転軌道の値が公表されました。公転軌道の値は、ちょうど事前にシミュレーションされていた火星のL4トロヤ群の値と一致するため、トロヤ群小惑星の候補として上がりました。 de la Fuente Marcos氏らは、2023 FW14が本当に火星のトロヤ群小惑星であるかどうかを証明するための力学的なシミュレーションを実行しました。また、スペインのラ・パルマ島に設置された「カナリア大望遠鏡」で2023 FW14を観測し、より詳しい性質を明らかにすることを試みました。 シミュレーションの結果、2023 FW14は真に火星のL4トロヤ群小惑星であることが判明しました。2023 FW14は21年ぶりに追加された、観測史上2番目の火星のL4トロヤ群小惑星であり、火星のトロヤ群は全体で17個となりました。 また、観測された表面の色などの性質から、2023 FW14はXc型というタイプに属しており、同じくL4トロヤ群小惑星である1999 UJ7と似ていることが分かりました。さらに、色から推定される反射率と見た目の明るさを元に、2023 FW14の推定直径は318m(119~811m)と計算されました。このことから2023 FW14はL4トロヤ群のみならず、火星のトロヤ群全体でもかなり小さい小惑星である可能性があります。
■新発見による新た謎とその解決策
ただし、この研究の結果は新たな謎を生むことにも繋がりました。2023 FW14の現在の軌道は不安定であり、火星のトロヤ群に属する期間は短いと推定されるためです。今回のシミュレーションでは、2023 FW14は約100万年前から火星のトロヤ群小惑星となり、約1000万年後までには現在の軌道から外れてしまうと見られています。また、2023 FW14は火星トロヤ群小惑星としては最も楕円形の軌道を持っています。これだけを見れば、2023 FW14は一時的に火星の重力で捕獲された小惑星である可能性が高いことになります。 一方で、2023 FW14の起源かもしれない1999 UJ7の軌道は数十億年に渡って相当安定しており、太陽系誕生時に火星と同じ公転軌道上で成長した微惑星の名残である可能性もあります。その場合、1999 UJ7は原始的な火星トロヤ群小惑星であることになります。しかし、類似している2023 FW14が原始的な火星トロヤ群小惑星ではなく、捕獲された “他人” であるならば、なぜお互いにこれほど似ているのかという疑問が生じます。 実は、L4トロヤ群の1999 UJ7が原始的な火星トロヤ群小惑星であるという説は、2023 FW14の発見以前から主張されており、同時に大きな謎となっていました。L5トロヤ群のエウレカや、それと似ているいくつかのL5トロヤ群小惑星は、1999 UJ7と同様に軌道が相当安定していることが分かっています。その一方で、1999 UJ7とエウレカはお互いには似ていません。原始的な火星トロヤ群は本来ならば同じ環境と材料で形成されたはずであり、本来は似ているべきであることを考えると、これは矛盾していると言えます。