空き家の古民家が駄菓子屋に、小銭を握りしめた子どもや家族連れでにぎわい…「地域おこしにつなげたい」
和歌山県有田市初島町で空き家となっていた古民家が改修され、こどもの日(5月5日)に駄菓子屋が開業した。消防士やデザイナーなど多彩な市外出身者4人を中心に運営し、子どもたちの新たな憩いの場となっている。さらにアトリエなども設けたい考えで、4人は「自分たちがやりたいことをやってみて、結果的に地域おこしにもつながる場所にしたい」と意気込んでいる。(竹内涼) 木箱に詰められた駄菓子(和歌山県有田市で)
発起人は、市消防本部に勤務する広川町出身の梅本修平さん(33)。管理人は妻の真美さん(32)が担う。古民家はエネオス和歌山製油所のすぐ近く。木造平屋の日本家屋や化粧品店を営んでいた建物などで構成され、総面積は540平方メートルだという。
きっかけは、2022年に同製油所の操業停止が発表されたことだ。当時、市役所に出向していた梅本さんは市内外から「有田市は大丈夫なのか」と、市の将来を不安視する電話をひっきりなしに受けた。「このままジリ貧になるのか」
そんな中、真美さんが店員として働き、自分も通っていたお気に入りのカフェ「ARC」の隣の古民家が、空き家バンクに登録されたことを知った。「何かできるのでは」との直感が働き、23年4月に借り受けた。どう活用するのか決まらないまま、とにかく物やほこりでいっぱいの家を休日返上で掃除し続ける日が続いた。
ほぼ1人で改修に取り組む梅本さんの姿は、ARCの常連たちの目に留まる。真美さんの紹介もあり、同じ広川町出身のデザイナー・宮井章仁さん(37)や、岩手県出身の絵描きで、ミカン畑の石積み職人としても活動するデンジャー佐藤さん(31)が仲間に加わった。
活用案を探る中、子ども好きの佐藤さんの提案で駄菓子屋に決まった。自分たちは子どもの頃に親しんだが、初島町内には長らくなかったことが要因だった。屋号は古民家の持ち主の名から「辻本」とし、ロゴのデザインは宮井さんが担当した。
駄菓子屋ができるらしい――。うわさを聞きつけた小学生たちが開業前から「いつできるの」と押し寄せた。オープンしてからは、小銭を握りしめた子どもたちや家族連れなどで連日にぎわい、すでに市民の日常に溶け込んでいる。