中国にとって「渡りに船」のブラジル・アルゼンチン「共通通貨構想」
(c) esfera/Shutterstock.com
ここ数年、 中南米地域では「ピンクの潮流」とも呼ばれる動きが広がりをみせており、数多くの国において左派政権が誕生している。 今年1月には域内最大の経済規模を誇るブラジルにおいて、 ルラ・ダ・シルヴァ氏が12年ぶりに大統領への返り咲き を果たし、約6年半ぶりに左派政権が誕生した。中南米は元々「米国の裏庭」と称されるなど米国の影響力が強い地域とされるものの、左派政権の誕生をきっかけに米国と距離を置く国が広がりをみせている。 ルラ政権も外交戦略として「多極化外交」を掲げており、同国が加盟するBRICS(新興5カ国)やメルコスル(南米南部共同市場)のほか、ジャイール・ボルソナロ前政権が参加停止を決定した、米国とカナダ以外のアメリカ大陸33カ国が加盟するCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)へ復帰し、これらの枠組みを外交政策の軸に据える姿勢を示している。 こうした戦略転換が地域情勢に如何なる影響を与えるかが注目されるなか、1月に行われたブラジルとアルゼンチンの首脳会談において、両国は共通通貨の創設に向けて協議を開始することを明らかにした。名称は「スル」(スペイン語で「南」の意味)で検討中だ。
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西濵徹