福島第一原発事故から3年 始まりに過ぎない発電所の現状は?
汚染水を処理するALPASそしてタンク
午前10時40分ごろ、最初に足を踏み入れたのは、多核種除去設備 (ALPS、アルプス)の設備。簡単に言うと汚染水から放射性物質を取り除く装置で、2013年4月に導入された。見かけはどこにでもある化学プラントのようで、取り立てて特別な使命を帯びた設備には見えなかった。当初、設備は露出していたが、今は屋根に覆われている。「ALPSからの漏れなのか、雨水なのか見分ける必要があったため」だという。 福島第一原発が抱えている大きな問題の一つが、汚染水問題だ。1日400トンの地下水が建屋に流れ込んでいると言われている。これはこれで流れ込まないような対策が打たれているが、流れ込んでしまった地下水は汚染される。 汚染された水からセシウムを取り除くのが「キュリオン」、「サリー」と呼ばれる装置だ。ただ、これだけでは、ほかの放射性物質が取り除けないので、ALPSが導入された。トリチウムを除く62種の放射性物質を除去する。トリチウムだけは普通の水に含まれているものなので、どうしても取り除けない。
ALPSは試運転中のステータスだが、すでに実稼働していて、3系統が動けば750トンの汚染水を浄化できる。「サリー」と「キュリオン」とは役割が違うため、ALPSが本格稼働してもこれらはお蔵入りにはならないという。処理された水は「汚染水」ではなく「処理済水」と呼ばれ、近くのタンクに貯蔵される。 構内には1000基のタンクがあって45万トンの水が貯蔵できる。うち42万トンの汚染水などによって貯蔵済みで、80万トンまでの増設計画がある。タンクには、さまざまなタイプがあり、フランジ型と呼ばれるボルトで組み立てるタイプのタンクからは汚染水漏れが相次いでいることから、「溶接型」タンクの設置と取り替えの作業が進んでいる。
燃料の取り出しが進む4号機
原子炉建屋は、北から順に1号機、2号機、3号機、4号機と並んでいる。水色と白で化粧された建屋が残っているのは2号機だけで、ほかの3つの建屋は水素爆発を起こしたため、もともとあった屋根がない。いまは、放射性物質が外に飛び散らないよう、上部にカバーがされている。 4号機では建屋の上に取り出しカバーが設置され、燃料プールにある燃料棒を取り出す作業が進んでいる。使用済みの燃料というのは、熱を出し続けるので冷却し続ける必要がある。また、その際、放射線を出すので水で遮蔽する役割がある。 以前あった4号機の燃料を取り出す装置は、爆発で被害を受けたため、建屋の南側に新たに鉄骨を組んで燃料を取り出す設備を作った。その鉄骨の重さは4000トン。東京タワーと同じだという。コンクリートの建屋と黒くペイントされた鉄骨の組み合わせが、どこか前衛的で巨大な美術館を思わせる。 薄暗い建屋に入る。作業用のエレベーターに乗り込み、階を上がると、5階部分に使用済み燃料プールが見えた。プールは綺麗な青い色の水をたたえていたが、周囲が暗いせいか濁っても見えた。プールから燃料を取り出し、キャスクと呼ばれる重さ約100トンの金属製容器に詰める。そこからクレーンで階下まで降ろされ、トレーラーによって発電所構内の共用燃料プールに運ばれる。燃料の取り出しが始まったのは2013年の11月からで、1月末までに使用済み燃料220体、新燃料22体を取り出した。