福島第一原発事故から3年 始まりに過ぎない発電所の現状は?
防護服の着用
まず最初に足を踏み入れるのが入退域管理施設。1日4000人の労働者が出入りするという。金属探知機、IDカードなどによる身元の確認を経なければその奥に進めない。 部屋に通されると、各自に防護服が用意されていた。防護服といっても、放射線を帯びた粉塵(じん)の付着を防ぐために着るのであって、放射線を遮る性質の防護服ではない。放射性物質を発電所の外に持ち出さないよう、あとで回収することに重きを置いている。なので、テレビや新聞の映像や写真では仰々しく映るものの、手元で見ると不織布(タイベック)でできた簡易的な薄い“つなぎ”だということがよく分かる。 ジーンズと長袖シャツといった普段着の上にベストを羽織る。ベストの左胸には線量計を携帯。その上に防護服を着る。手袋は布製1枚とゴム製2枚の三枚重ね。袖口はテープで巻いて止める。靴下は2枚を重ね、そして顔全体を覆う防塵機能が付いたマスクを着用する。マスクをかぶると、声が通りにくく、話がしづらい。大きく息を吸い込むごとにマスクが顔に密着する。マスク越しでは、誰なのか判別ができないから、防護服に名前を書いたテープをはった。 原発構内の撮影は代表取材となっていて、持ち込んだのは1台の一眼レフカメラと1台のビデオカメラ。いずれもビニールで包んで放射性物質がカメラ本体に付着しないようにした。
東電からは事前に「取材には放射線被曝をともなう」と説明があった。ただし、その量は0.20mSv(ミリ・シーベルト)以下に抑えるということだった。放射線医学総合研究所によると、東京~ニューヨーク(往復)の飛行機で被曝する量は0.1mSvで、自然放射線から年間に被曝する量は2mSvとしている。 少し補足しておくと、mSv(ミリ・シーベルト)とμSv(マイクロ・シーベルト)とでは規模が1000倍違う。つまり、1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv(マイクロシーベルト)なので、0.2mSvは、200μSvと同等になる。 また、多くの場合省略されることが多いのが「シーベルト毎時(Sv/h)」の「毎時」の部分で、これはその場所に1時間いたときに被曝する量を言う。なじみのあるところで言うと、時速のようなものだ。今この瞬間、時速100キロメートルで走っているかもしれないが、その速度で1時間走り続けないと100キロの距離まで到達しない。同じようにその場の放射線量を測った値は、毎時の値であって、積算した被曝量を意味しない。 そういうことなので、今回、取材による被曝量を0.20mSv以下に抑えると言った場合は、毎時の話をしているのではなくて、結果的に被曝する積算量を意味している。 携帯電話は線量計と干渉する可能性があるので、施設で預かってもらう。用意されたゴム製の靴を履き、ヘルメットをかぶって建物の外に出る。バスで移動する際は、放射性物質によってバスが汚染されないよう、靴の上にビニールを履くという徹底ぶりだ。 午前10時30分、防護服に身を包んで外に出た。構内を行き交うトラックや自動車の運転手もみな同じ格好をしているのが見えた。