上昇する米国の教育コスト 私立トップ大学は年間1,300万円
学費免除でも低所得層に立ちはだかるハードル
アメリカの多くの大学は「ニードブラインド入学」、つまり各学生の家庭の経済状況などを入試の合否判断材料にしない入学を政策として取り入れ始めているが、それでもなお低所得世帯の学生はハーバードをはじめとするエリート校へ入学するのに必要な「競争力」を得られずにいると指摘されている。 というのも、こうした大学が「学業での優秀さ」とともに「課外活動への取り組み」を重要視し、全体的なプロセスから判断して優秀な学生を迎え入れたいため。ただ標準テストと同様にここでも格差が生じる可能性があるというものだ。 例えば、高所得世帯の学生は願書により多くの課外活動を挙げることが可能な一方、低所得世帯の学生は経済的な理由でこうした課外活動に従事できていないケースが往々にしてあることが理由。 放課後にスポーツや趣味、ボランティア活動に打ち込み、キャプテンやリーダーシップを発揮できる経験をする余裕のある高所得層と、放課後は家計を支えるためにアルバイトをする、または共働きの親に代わって兄弟の面倒を見なければならない家庭層との間にギャップがあるのだ。 例えば入学願書で高評価を獲得できるフェンシングを習うとなると、レッスン代や交通費込みで数千ドルもの出費は必須。また、サッカーや野球といった従来のスポーツでも、ユニフォームや道具代、教室までの交通費や送迎と、家庭への負担は決してゼロではない。 900以上もの大学に出願できるプラットフォームのCommon Application利用者のうち41%(約86万人)が2018~19年度および2019~20年度に同プラットフォームを通じて一流大学へ願書提出しており、その4分の1の学生が低所得世帯の学生だと判明している(受験料の免除を申請しているため)。 また、このプラットフォームに提出された600万通近くの願書を精査したところ、受験料の免除を申請した(つまり低所得世帯)学生の願書で、課外活動でのキャプテン、代表者、創設者といったトップクラスのリーダーの役割を記載したものは55.9%少なかった。 また私立高校と公立高校の出身者を比較すると、私立高校の生徒が平均して17.3%多くの課外活動を記載。スポーツに限定するとこの数値は35.8%まで上昇する。 ただし研究者グループは、より恵まれない境遇にあるがためにリーダー的な役割を果たしていないのかというと必ずしもそうではなく、トップクラスのリーダー的役割を果たした学生の割合は社会経済的背景や人種、民族を問わず同等にあるとのこと。 ただし、課外活動の「数」での差異が生じていることは事実だと指摘している。課外活動の平均記載数は7つであることから、願書に記載できる課外活動の数を4または5つまでと制限することを提言している。 また、スポーツや文化活動に限らず、家族のケアラーとしての活動や毎週20時間アルバイトをした経験なども同様に重視するべきだとしている。