変容するロシア・ウクライナ戦争の構図――NATO諸国からの武器供与を引き出す戦い
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2022年2月24日の ロシアによるウクライナ侵略 の開始から、半年が経った。戦争はまだ続いている。戦争の長期化は多くの犠牲を生む。しかし、戦争が短期で終了したとすれば、どのような戦争になっていたのだろうか。ウクライナが短期決戦で勝利した可能性は――そもそも侵略を始めたのがロシア側だったという意味で論理上も、そしてロシア優位の兵力差を考えれば現実問題としても――存在していなかった。つまり短期戦だとしたらロシアの勝利が不可避だった。ウクライナが勝利する、ないし少なくとも負けないためには、少しでも長く抵抗する、つまり長期戦に持ち込むほかなかったのである。この理解が全ての出発点になる。 この半年間、ウクライナは短期戦で早期の敗北・降伏に追い込まれるのを防ぎ、長期戦化をはかるなかで、ロシア軍の撃退と、独立した主権国家としてのウクライナの存続を目指してきた。ぎりぎりの選択だった。ただし、ロシアとの国力の相違を踏まえれば、ウクライナが戦争を継続するには、他国からの武器供与が不可欠であった。 ロシアという敵に立ち向かうとともに、米国をはじめとするNATO(北大西洋条約機構)諸国からの武器供与の確保が、ウクライナにとっては重要な戦いだったのである。そしてこの問題をめぐる構図は、開戦前、戦争初期、そしてその後と変遷してきた。ウクライナはいかにしてNATO諸国の支援を引き出し、そのためには何が必要だったのだろうか。順にみていこう。
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鶴岡路人