「原発は一石十鳥」の熱狂が冷めた瞬間…能登半島地震の被災地が、実は「原発の建設候補地」になっていた…地元誘致の虚構に迫る
2024年1月1日、能登半島地方をマグニチュード7.6、最大震度7の地震が襲った。地震により震源地の石川県珠洲市周辺では4メートルにおよぶ地盤隆起も生じて被害を大きくした。そうした中で注目を集めたのが、大きな地盤変動が起きた珠洲市が、かつて原子力発電所の立地予定地だったことだ。なぜこのような場所が候補地になったのか。珠洲市で立地計画への反対運動に携わった元石川県会議員の北野進さんに話を聞いた。 【画像】「南海トラフ巨大地震」は必ず起きる…そのとき「日本中」を襲う衝撃の事態
原発はどのような地域に建設されるのか
政府は2024年度に、中長期のエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」を見直す方針だ。気候変動対策やエネルギー安全保障が課題となる中、経済産業省は原子力発電所の新増設にも意欲を示す。 脱炭素に向けた取り組みを議論する「GX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議」で斎藤健経産相は8月、原発の再稼働や新型炉の新設の投資を拡大する方向性を示した。 とは言っても、2011年に発生した東京電力福島第一原発の事故で立地地域だけでなく周辺の自治体も多大な被害を受けたこともあり、新設は容易ではない。 現在、新たな土地で建設が計画されているのは中国電力が山口県の祝島に計画している上関原発だけで、それも住民の反対運動が強い中、着工時期は見えていない。 ところで、そもそも原発はどのような場所に建てられるのだろうか。 原発を建設する際には国が定めた一定の基準に基づいて安全審査が行われる。福島第一原発の事故前は、原子炉立地審査指針で大事故を起こす地震や津波などの事象が過去になく、将来も起こる可能性が低い場所で、なおかつ周辺人口が少ないことなどを求めていた。現在は新規制基準に基づいて原子力規制委員会が審査を行うことになっている。 けれども全国に数多ある地域の中からどこを選ぶのか、明確な判断基準は見えない。審査は場所が決まった後で行われるから、候補地になった時点では安全かどうかはわからない。 予定地の安全性については、2024年1月1日に発生した能登半島地震で判断根拠の不透明さが表面化した。 マグニチュード7.6の能登半島地震は、10月22日時点の集計で約2万4000戸の住宅が全半壊し、災害関連死を含めて400人以上の死者を出す大災害になった。同時に注目を集めたのは、原発予定地だった石川県珠洲市などで、大規模な地盤隆起が発生したことだった。 珠洲原発の調査予定区域に隣接する高屋漁港では、2mの隆起が発生して海底が露出した。石川県全体では69漁港のうち60漁港で防波堤などに損傷が生じた。 地盤が安定していることは原発建設の条件のひとつだが、計画時にどこまで考慮されていたのか疑問が浮かぶ。 他方、国や電力会社はお金をちらつかせて過疎地の自治体に受け入れを迫ったりしているのではないかという批判は常に出る。けれども計画段階では民間企業の体をした電力会社主体なこともあり、選定経緯が公文書などで公表された例はないのではないか。 ここでは、2003年に計画が止まるまで珠洲原発の反対運動に携わってきた、元石川県議会議員の北野進さんに当時の話を聞き、原発の建設予定地はどのように選ばれるのかを考えてみた。