ラストのせりふは「最初から決まっていた」 チーフ演出が語る「光る君へ」最終回
劇中には、紫式部をはじめ、清少納言、和泉式部、赤染衛門ら女性作家が登場した。この後、女性文学者が歴史上で注目されるのは明治時代まで下るという。
「道長時代に女性文学者が花開いてその後絶えたのは、それだけ道長という存在があったおかげもあるのかなと思いました。道長の時代は、大きく世の中を揺るがすような戦は起きなかった。政治家として大きな何かをやったわけじゃないけれど、そういうところもちょっとはあると思ってもらえたら」と語る。
■鳥かごの意味
最終回でクローズアップされたのが、まひろの家、為時邸にある「鳥かご」だ。吊ってあった鳥かごをまひろが外そうとすると、壊れて落ちてしまった。その後、まひろは従者の乙丸を連れて旅に出る。「本当に最後、まひろが鳥のように飛び立っていくということです。もう鳥のように戻ってこないみたいな感じです」
この鳥かごは、実は第1回から登場している。幼いまひろは飼っていた鳥に逃げられてしまう。逃げた鳥を探していたところ、三郎(道長の幼名)と出会ったのだ。空っぽの鳥かごは、捨てられることなく為時邸に吊り下げられてきたが、鳥かごを象徴的に使うことは、美術チームからの提案だった。「鳥が逃げたから鳥かごを捨ててしまうのではなく、あえて残すことで、意味合いが深まっていくというご提案をもらったんです。空の鳥かごがずっと置いてあるっていうのは、 何かその時々ニュアンスとして、味付け的に引っ張っていけるんじゃないかなと思って残していました」
以降、経年劣化させつつ、鳥かごは為時邸に飾られ続けてきた。「最後の方になって、これどうやって処理しようかと。鳥かごも決着しないとダメだよねと思いました」。その結果、まひろの旅立ちのきっかけの演出として使われたのだ。
■武士の時代へ
1年にわたり描かれてきた物語は、双寿丸(伊藤健太郎)ら武者とすれ違ったまひろが、「道長さま、嵐がくるわ」とつぶやき、幕を閉じた。