【皇室コラム】「その時そこにエピソードが」第22回 <スウェーデン大使館ーー王政500周年で始まるリノベーション>
日テレNEWS
北欧の国スウェーデンが6月6日、王政が始まって500周年の節目を迎えました。9月にはカール16 世グスタフ国王の即位50周年と慶事が続きます。その節目の年に、日本の文化との融合という思いを込めた東京の大使館がリノベーションされることになり、大使公邸の一部が公開されました。ペールエリック・ヘーグベリ大使にインタビューし、大使館の歴史や日本との関係を振り返ります。(日本テレビ客員解説員 井上茂男)
■赤く円い外壁と城のような建物――両国の文化を融合させた大使館
東京都港区六本木1丁目。超高層ビル群の一角、緑に包まれた静かな丘の上にスウェーデン大使館はあります。近くにはスペインやアメリカの大使館、ホテルオークラ……。円柱を4分の1に切ったような円形の壁が印象的な9階建ての建物です。赤い御影石の外壁は太陽の動きに合わせてらせん状に立ち上がり、その内側に日本の城を思わせるビルが階段状に収まります。赤い塗装はスウェーデンの住宅に多い壁の色を、緑青がふいた銅葺きの屋根は日本の寺社をイメージさせます。
ユニークなフォルムは、スウェーデンと日本の建築家によって両国の文化の融合を目指して設計され、1991(平成3)年に完成しました。大使館や大使公邸、スウェーデンの商工会議所、外交官の住宅などが入っています。リノベーションは今後2~3年かけて行われ、フォルムはほぼそのままに、水回りや電気、空調設備を一新し、人と文化が集う場所の機能を拡充させて生まれ変わるそうです。
■大使インタビュー 「リノベーションを友好関係のアップグレードに」
2019(令和元)年に着任したペールエリック・ヘーグベリ大使にインタビューを申し込むと、大使は快く建物の魅力を熱く語ってくれました。
「大使館はその国の象徴であるだけでなく、気軽に来てもらえることが大事ですから、こんな好立地はありません。先人はよくこの土地を探したと思います。外壁のらせん状のラインは日の出を象徴し、日本の城にも、私たちの祖先のヴァイキングの船にも見えます。外壁の赤い御影石は夕日を浴びると美しく輝きます。赤い塗装は角度によって見える東京タワーとも色を合わせているようですし、神社の鳥居も思わせます。平和の象徴で、素晴らしい建物です。私はこの建物が大好きです。王政500周年と即位50周年の節目の年に始まるリノベーションは、単なる建物の改修に留まらず、日本とスウェーデンの友好関係のアップグレードにつなげたいと思っています」