「ポストSDGs」に役立つ日本遺産制度とは
■八王子市や京王電鉄の取り組み
高尾山を訪れる魅力は、絹産業を基盤として発展し「桑都」と称された八王子市が主軸である。八王子市では、高尾山の自然保護区域の維持管理を積極的に行い、多様な生物種の保護とその生息環境の維持を図っている。これにより、生物多様性の保護というSDGsの目標15を具体的に支援している。 また、市は日本遺産のストーリーを前面に押し出し、教育プログラムや観光キャンペーンを通じて、文化遺産の価値を国内外に広く伝えている。これはSDGsの目標11のターゲット4(世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する)に貢献しており、八王子市の文化的な取り組みは地域全体の持続可能な発展に寄与している。 さらに、京王電鉄は高尾山と新宿を結ぶ重要な交通手段である。京王線を利用することで、新宿から高尾山口駅まで直接アクセスが可能であり、観光客や地元住民の移動を効率的に支援している。 SDGsを重視する京王電鉄は、地域の観光振興に不可欠な役割を果たしており、高尾山へのアクセス向上により、さらなる観光客の流入が期待されている。このような交通の利便性は、高尾山の観光地としての魅力を高め、経済的な恩恵を地域にもたらしている。
■ポストSDGsは複合的解決
日本遺産制度は、文化財を中心に、「面」でプラットフォームを形成する政策がパワーを発揮している。SDGsでは、環境関連のSDGsに加えて、次のターゲットが重要である。 8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。 11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。 さらに、ポストSDGsでは文化的側面の「質の高い学び」が重要であるので、次のターゲットも外せない。 4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 コロナ禍を経て世界中の人々の価値観が変わり、観光でも体験を重視する傾向が強くなったインバウンドの旅行者に訴求するとともに、日本の魅力をわかりやすく説明するための異文化理解も深める必要がある。 このようにポストSDGsでは、官民連携による経済・社会・環境の複合的解決が一層重要なポイントとなる。