「いつの間にか量減ってない?」 メーカーがステルス値上げに走るジレンマ #くらしと経済
「ステルス値上げのほうが手に取りやすい」小売りは限界に
原因は円安やインフレ、原油高などだ。食用油のように、明示して店頭価格を上げられれば消費者も納得して選択できるだろう。ただ、問題となっているのは「内容量を減らして価格を維持する」ステルス値上げだ。秋葉氏は”しれっと値上げ”されていいるステルス値上げの事例の増加を肌で感じている。 「特にお菓子は、値段が据え置きで内容量が減っている。嗜好品だから価格を上げにくいっていうのもあるのかもしれないね。一口サイズの小分けにされているお菓子のサイズが小さくなったら気づきやすいかもしれないけど、麦チョコみたいに小分けにされずに入っているお菓子が2%減っても誰も気づかないよ」
ハムやソーセージなども輸送コストの高騰などを受け、2023年4月に「規格・内容量変更」が発表され、一部商品の値上げや内容量の削減が行われた。「メーカーのホームページで発表されているから“ステルス”じゃないのかもしれないけど、ほとんどの人はわざわざ見に行かない。だから、お客さんはお弁当を作るときとかに気づくみたい。いつもは3本ずつ家族全員に配ってたのに足りない、って」 値上げではなく、消費者離れを招きかねない「ステルス値上げ」を選ぶ理由はどこにあるのだろうか? 「正直、お値段据え置きのほうが手に取りやすいんだよ。内容量が一緒で値段を上げた商品よりも内容量が減ってもお値段据え置きのほうが圧倒的に手に取りやすい。この“手に取りやすい”っていうのが小売りでは重要で、一回購買意欲が削がれてしまうと、他の売り場にも影響が出てきちゃう。だから店頭にはその日のお買い得商品を並べて、購買意欲をかき立てる。極端なことを言えば、赤字の一般商品が出ても他の商品でなんとか利益を出すようにしている」 全国に展開する大手チェーンのスーパーに比べて、購買力が弱い中小小売りは限界に近づきつつある。 「一般商品に関しては中小のスーパーで組んで、メーカーから大量購入してコストを抑える取り組みをしてなんとかしのいできた。“おかずが一品減って悲しい”、そんな食卓にさせないように今まで頑張ってきたけど、ほとんどの小売は限界。かと言って値上げするのもできないから、一部の一般商品ではメーカーのステルス値上げを受け入れるのもやむを得ない」