ドリス ヴァン ノッテン最後のランウェイショーに拍手喝采!
デザイナーたちからのオマージュ
賛辞が飛びかい、思い出が口々に語られた。いつも物静かなドリス・ヴァン・ノッテンだが今日は彼が主役だ。アイコニックなベルギーのデザイナー、ダイアン・フォン・ファステンバーグは、彼の規律感覚や美的センス、エレガンス、誠実さを称賛した。Y / Project(ワイプロジェクト)やディーゼルのデザイナーであるグレン・マーティンスは、彼の完璧主義と詩情を称え、「色彩と美の巨匠を目の当たりにすると、インスピレーションが湧いてきます。これほどのモダンさ、センスの良さの持ち主は今後なかなか現れないでしょう」と語った。一方、ブランド「Ami(アミ)」を創設したアレクサンドル・マテュッシはこんなふうに感嘆する。「ドリスはひとつの基準点であり、エレガンスの象徴であり、服に対する真のセンスと着ることへのこだわりを持つデザイナーです。彼のようになりたいと心底思っています。ファッションに情熱を注ぎながら、私生活とのバランスをうまくとってきた点も尊敬しています。今の時代にあってそれは本当に粋なことです」。
銀箔のランウェイ
午後10時、黒いカーテンが開くと、招待客の前に銀箔を敷いた巨大なランウェイが現れた。銀箔はキラキラ光り、ふわっと舞いあがる。いよいよショーの始まりだ。1990年代を代表するアイコニックなベルギー人モデル、アラン・ゴシュアンがエレガントなブラックロングコートでオープニングを飾った。彼はドリス・ヴァン・ノッテンのファーストショーに参加したモデルで、カレン・エルソン、カーステン・オーウェン、レオン・デイム、ハンネ・ギャビー・オディールとともにドリス ヴァン ノッテンの顔として活躍してきた。彼ら全員が今回のショーに参加している。デヴィッド・ボウイの「ムーンエイジ・デイドリーム」の曲が流れるなか、彼ら以外にも幅広い世代の男女モデルがランウェイに登場した。
ピンク、ピーチ、ライム
透けるオーガンザを使ったルーズフィットのトップスやパンツはまるで浮遊しているようだ。単色でカジュアルシックな雰囲気のスーツはカッティングが完璧で、ゴールドのモチーフ刺繍が際立つ。やがてランウェイは色彩豊かになり、素敵なピンクのシルクコート、ピーチのモヘア、ライムのラメなどが登場した。もちろん繊細な花も健在だ。軽やかなコットンや素朴なウール、クラシックな英国ヘリンボーン、くしゃくしゃのガラスのようなナイロンなどの素材が生き生きと、過去や未来の物語を語りかけてくる。ゴールドメタルを彫刻したかのようなバミューダパンツやジャケット、トップ、パンツは照明によってゴールドにもシルバーにも美しくきらめき、魅惑的な黒との組み合わせが秀逸だ。 ドリス・ヴァン・ノッテンも深く感動しながら挨拶に立った。スタンディングオベーションが起こり、ランウェイに巨大なディスコボールが出現した。「こんな体験は本当に久しぶり」と百貨店のファッション・エディターがはしゃいでいる。さあパーティーの始まりだ。このショーが終わってもブランドは続いていく。そのことはデザイナーが明言している。本人は引退してアントワープの庭で花を愛でる生活をしていくにせよ、ブランドとの関係は続く。2018年に同ブランドの過半数株式を取得したプーチ・グループとともに後継デザイナーの名をもうじき発表するはずだ。