ブドウを12粒食べる地域も…世界の人たちは新年に何を食べる?実は日本の「正月料理」が世界的にも特殊な理由
■お節は「ハイコンテクスト文化」を体現している? このお節料理のゲン担ぎ、なかなか“ハイコンテクスト”だ。意味を知らない外国人が見たら、黒豆はただの真っ黒な豆だし、数の子はぷちぷちしていてなんともいえない味だし、海老は殻なしでまっすぐの方が食べやすいと思うかもしれない。意味を理解し信じないと成り立たない、ハイコンテクストな食べ物なのだ。 パイや餃子に「あたり」が入っているのは、文化を共有していなくても経験を共有できる。あたりはあたり、その人はきっとラッキー、わかりやすい。数の子を食べて「今年も……」と願いを込めるのはそれより一段ややこしい。
日本文化はハイコンテクストな文化だと言われる。「ハイ(ロー)コンテクスト文化」というのは、アメリカ合衆国の文化人類学者エドワード・T・ホールが『文化を超えて』(1976年)で提唱した概念だが、ハイコンテクスト文化ではコミュニケーションが価値観や感覚といったコンテクスト(文脈)に大きく依存するとされる。 暗黙のルールが多く、行間を読んだり空気を読むことが重視されるといった日本文化は、最もハイコンテクスト文化な例として挙げられている。確かに「ぶぶ漬けでもどうどす」などは行間を適切に読まないと意味がわからず、その文化の外で育った人には極めて難しい。
これは海で隔離された島国であり、文化・民族的多様性が少なく、ほぼ全員が日本語を話すという極めて均質な文化背景の上に成立したものとされる。全員が同じ前提を持っている(あるいは実際はそうでなかったとしてもそう信じられる)環境でない限りゲン担ぎというものは成立しないだろう。 先に挙げた国々のすべてがローコンテクスト文化というわけではないが、西洋はローコンテクスト文化の傾向が強いとされる。移民国家アメリカや、昔から交易やビジネスのため多国籍の人を受け入れてきたオランダを見ると、コミュニケーションの違いは明らかだ。