「脳の細胞は増減しないんです」…意外過ぎる認知症の原因!細胞の「レジリエンス」をあなたは知っていますか?
人生100年時代。平均寿命が上がり続けている現代の日本では、そう遠くない未来に100歳まで生きることも当たり前になっているだろう。そんな時代にいつまで現役を続けられるのか? どんな老後の過ごし方が幸せなのか? 医療はどこまで発展しているのか? ノーベル賞学者と永世名人。1962年生まれの同い年の二人が、60代からの生き方や「死」について縦横に語り合った『還暦から始まる』(山中伸弥・谷川浩司著)より抜粋して、「老化研究の最先端」をお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『還暦から始まる』連載第2回 『「老後」は存在しない…「不老不死」よりも「健康寿命」を延ばすことが重要! iPS細胞の可能性を還暦越えの科学者が語る! 』より続く
細胞の余力を回復させる
谷川 細胞の「余力」というのは、具体的にどういうことでしょうか。 山中 最近、「レジリエンス」という言葉が使われるようになっていますね。「回復力」とか「復元力」と訳されますけれども、それに近い考えです。 レジリエンスという言葉をよくメディアで見るようになったのは、2011年の東日本大震災の後だったかもしれません。大変な経験をされても、ある人はそこから立ち直って前向きに次の人生を歩まれています。 でも同じような経験をされても、そこからなかなか立ち直ることができない人もいます。それを指して当時、「レジリエンスが強い」「レジリエンスが弱い」と表現されていました。 それは精神的なレジリエンスですが、同じことが私たちの体をつくっている細胞にも言えて、同じ細胞であっても、若いときの細胞はレジリエンスが強くて、外からいろいろな負荷がかかって少々調子が悪くなっても病気にならない。 それが加齢とともに弱くなって病気になりやすくなる。なぜレジリエンスが低下してしまうのかを解明して、低下させないようにしたり回復させたりして健康寿命を延ばす方法を発見するという研究です。 夢のような話と思われるかもしれませんが、現在のさまざまな科学的な成果は、昔はすべて夢やSFの世界のことと考えられていましたからね。