蒸気、木漏れ日、樹木が見通しを悪化。|長山先生の「危険予知」よもやま話 第25回
JAF Mate誌の「危険予知」を監修されていた大阪大学名誉教授の長山先生からお聞きした、本誌では紹介できなかった事故事例や脱線ネタを紹介するこのコーナー。今回は山道の危険な凍結路面の話から、長山先生が海外に視察に行った際にロンドンバスを運転したことなど、ビックリネタを披露してくれました。 【写真】危ない! この危険、予測できますか?
蒸気、木漏れ日、樹木が見通しを悪化。
編集部:今回は雪が残る郊外の山道を走っている状況です。対向車とすれ違いながら左カーブに入ったところ、2台目の対向車がセンターラインをはみ出してきて衝突しそうになる、というものです。路面から蒸気が立ち上っていて、ちょっと見えづらい状況なので、対向車のはみ出しに気づくのが遅れそうですね。 長山先生:そうですね。今回は蒸気以外にも前方の視界を悪くする原因がいくつかあるので注意が必要です。 編集部:蒸気以外にもありますか? 長山先生:そうです。路面に立ち上る蒸気は私自身あまり経験がありませんが、写真のように木漏れ日の影響で前方が見えづらくなるケースは少なくありません。 編集部:たしかに日差しが差しているところと日陰が交互に来ると、トンネル前後と同じで、明暗の差が大きく見えにくいですね。今回は日向と日陰が交互に来る感じではありませんが、道路には燦燦と日が差していて、しかも逆光気味なので、見えづらいことに変わりはありませんね。 長山先生:天気がいいぶん、路面の照り返しはきつくなります。直射日光が運転席に差してガラスは反射しますし、景色も白っぽくなって視界が悪化します。景色が白っぽくなり視界が悪化するというと、ドイツの冬を思い出します。 編集部:ドイツの冬ですか? 長山先生:そうです。雪が乾燥していると前を走る車が雪を吹き上げながら走りますから、吹き上げられた雪が視界を遮って前方が見えづらくなるのです。 編集部:乾燥した雪ですか? 日本で言うと新潟などに多い湿った雪ではなく、北海道などのサラサラの雪のことでしょうか。日本でも冷え込みが強く風も吹いていると、根雪にならず路面のサラサラの雪が風や車の通過で舞い上がり、視界が悪化しますけど、それと同じですね。 長山先生:そのとおりです。天気が良いと巻き上がった雪に太陽の光が反射して、さらに見えにくくなるようです。今回は路面の雪はほとんど融けていて、その点は問題ありませんが、カーブの先が崖や樹木で見えなくなっています。落石防護用の金網や岩盤に自生している樹木でカーブ前方の視界が完全に阻害されていて、見える範囲が限られています。もしカーブ直後に車が停止していれば、路面が濡れていて摩擦係数が低いので、止まれずに追突してしまうでしょう。 編集部:樹木も気になりますが、崖自体がほぼ垂直にそそり立っていて、先がまったく見えませんね。そうすると、ついカーブの先、左側ばかり注意してしまいそうですが、結果は「赤い車のはみ出し」でした。対応が遅れそうですね。 長山先生:おっしゃるとおりで、見通しが悪いカーブだからとそちらばかり意識していると赤い車への対応が遅れます。黄色のセンターラインをはみ出すこと自体、対向車側に問題がありますが、事故防止には相手の間違った行動にも対応できる防衛運転が重要になります。今回の状況には、対向車がはみ出すことが予測できる要素がいくつかあります。