プーチンに戦争を続ける「余力」はあるか。2025年初から分析するロシア経済の明暗
ロシア「軍需シフト」の痕跡2:自動車の生産台数の変化
図表3自動車の生産台数 自動車の生産台数の推移からも、軍需シフトの進展がうかがい知れる(図表3)。 まず、乗用車の生産台数をみると、2021年に140万台近くだったのが、2022年には40万台レベルにまで落ち込んだ。これは主に、それまで欧州との間で築かれていた自動車産業の供給網が、米欧による経済・金融制裁を受けて寸断したことを反映した動きである。 乗用車の生産台数は2024年も60万台レベルにとどまり、回復が遅れている。ロシア系の完成車メーカーや中国系の完成車メーカーが、ロシアから撤退した米日欧の完成車メーカーの生産レーンを用いて国内での生産を増やしているが、生産の水準はウクライナ侵攻前に比べると大きく劣っている。一方で、中国からの完成車輸入が増えている。 他方で、トラックやトレーラー・セミトレーラーといった、より軍需に適う車両に関しては、2022年に生産台数が減少したものの、2024年には過去最高水準を更新している。特にトレーラー・セミトレーラーの生産台数は増加が顕著であり、2023年は21.3万台と前年から3割も増産され、2024年も20万台強とさらなる増産が見込まれている。 もともとロシアのトラック市場は、その半分近くを国産のカマズ(KAMAZ)が占めており、トレーラー・セミトレーラーに関してもグルンワルド(Grunwald)といった国産メーカーが有力だった。そのため供給網が国内に構築されており、乗用車に比べると米欧による経済・金融制裁の影響を受けにくかった可能性が意識されるところだ。 あるいは、マクロ的には、利用しうるヒト・モノ・カネといった生産要素を、軍需に適う車両であるトラックやトレーラー・セミトレーラーに優先的に配分していることも考えられる。いずれにせよ、こうした自動車の生産台数の動きもまた、ロシア経済の供給面からの軍需シフトが着実に進んでいることを、端的に物語っているといえよう。