「5000万円の金ピカ仏壇」「1500万円でチーン」…。富裕層の「ずるい節税」を相続専門税理士が解説
気鋭のノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ 超高級老人ホーム』が話題だ。本富裕層のみが入居する「終の棲家」を徹底取材し、幸せな死に方とは何かを本書では問うている。本稿では、元「週刊文春」記者で経済問題に詳しいライターの坂田拓也氏に、富裕層がやっている「ずるい節税」について寄稿いただいた。(取材・文:坂田拓也、構成:ダイヤモンド社書籍編集局) ● 1500万円の「純金仏具」 都内の百貨店の上層階に上がると、催事場の一角に金色の「おりん」が7、8つと並んでいた。仏壇に置いてチーンと鳴らす小さな器である。 価格は高く、150万円、300万円、450万円……最高額のおりんは何と1500万円だ。 「相続税対策ですよね?」と店員に聞くと、「仏具は課税されませんから」と澄ました顔で応えた。 相続税法12条では、「墓所、霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」は相続税の課税価格に算入しないと定められ、ここには仏壇や仏具なども含まれていると解されている。 そのため、1500万円のおりんを購入することは大きな節税策となるのだ。相続税対策で販売されているおりんは純金製。相続の手続きが終われば、純金の時価で売却することもできる。 「ただし非課税になる金額の範囲は定められておらず、税務署の判断になります。普通のサラリーマンが1500万円のおりんを購入すれば明らかに変です。例えば500万円分は仏具として非課税となり、残り1000万円は純金という財産として課税される可能性もあります。 しかし富裕層であれば豪華な仏壇や仏具を揃えていてもおかしくありませんし、大きな節税策になります。以前、5000万円をかけて純金製の仏壇を作った人がいました」(相続税専門のベテラン税理士) ● 「知らない」だけで損をする 奇異に見える高額のおりん購入が密かな節税策になる1つの要因は、相続及び相続税の制度が大変複雑で、その分だけ“抜け道”ができるためだ。 相続順位だけでも、配偶者、子どもや孫、両親、兄弟姉妹、そして甥と姪の代襲相続……と民法で定められている。故人に会ったこともない甥や姪が相続人になることもあるほどだ。さらに相続人によって法定分配割合も異なる。 相続順位や分配割合は入口に過ぎず、その先の相続手続きはさらに複雑だ。 「相続税の制度は、納税額を減らすことができる様々な特例が設けられています。しかし、それが抜け穴として広く知られると特例が廃止され、新たな特例が作られます。その中には、事前に準備しておかなくては利用できないものが少なくありません。次々に生まれる特例を理解して、事前に準備する人が得をする制度でもあるのです」(前出・ベテラン税理士)