FIAが2026年新レギュレーション導入に向けた”ミュールカー”テスト実施を承認。ライバルに差をつける、最初のチャンスになる?
■F1チームが直面する課題
過去のミュールカーは、レギュレーション変更に伴って最低重量が引き上げられることに対処すればよかった。しかし2026年からのマシンは現在よりも軽量化されることになっているため、チームとしてはミュールカーを軽く作らなければ、正確なデータを取るのは難しい。 ダウンフォースに関しても、これまではレギュレーション変更に応じて増やしたり、減らしたりすればよかった。しかし2026年からはアクティブエアロが導入されることが予定されており、これをミュールカーで再現するのはほぼ不可能であろう。 大幅に変更されるパワーユニットの問題もある。かつては、ミュールカーでもパワーユニットは現行と同じものを使うことができた。しかしレギュレーションでパワーユニットの規格も変わる今、ミュールカーでどれだけのことを学べるのかというのは疑問だ。 ただ、過去4年いずれかのマシンを改造のベースに選択することができるというのは、チームにとって選択肢が増えるということを意味する。 例えば、2021年の旧レギュレーション下でのシャシーを、ミュールカーのベースにすることも可能だ。この2021年マシンは現行の車両よりも小さく、2026年からの車両の寸法に比較的近い。ただこの車両は、現在のようにグラウンド・エフェクト効果を多用するものではなく、ウイングなど車両の上面に取り付けられたパーツでダウンフォースの大半を稼ぐというコンセプトだった。一方で現行レギュレーション下のマシンは、2026年のマシンと比べると明らかに大きく、重い。 2026年に向けてどれだけ有益なミュールカーを用意できるか、それはFIAが定めた規制の範囲内で、マシンをいかに改造するかにかかっている。 そしてうまくミュールカーを準備することができれば、2026年以降のF1を戦う上での優位性を確保する、最初のコース上でのチャンスを”掴んだ”ということに繋がる可能性もある。
Ewan Gale