「鳥肌が立つ、確定申告がある。」知的障害のある息子と歩んだでこぼこ道
そして2021年分の所得から、覚さんは俊輔さんの扶養を外れ、確定申告をすることになった。 母・小林眞喜子さん 「覚のちょっとした収入でご飯を食べに行って『覚くんごちそうさまでした』『どうもありがとうございます』なんて言って幸せを感じていたんです」 父・小林俊輔さん 「(扶養の)基準を超えたり下がったり、その度に私の扶養に入れたり外したりしなきゃいけなくなるんで、なんか意外と煩わしいなっていうふうなことは思ったんですけれども、それ以降はもう割り切って、覚を独立させてしまって、私の扶養からは外しています」 2023年、岩手県の盛岡駅や、国税庁に近い霞ケ関駅などに「鳥肌が立つ、確定申告がある。」としてポスターが掲載された。そこには、こんな文章が書かれていた。 ◇ 「息子が扶養の基準を超えて、確定申告することになりました」 重度の知的障害がある方のご両親からの連絡だった。 (中略) 確定申告の連絡を受けた時、思わず鳥肌が立った。 これは、ただの確定申告じゃない。 世界の前進を教えてくれる、確定申告だから。 ◇
年収が103万円を超える場合、家族の扶養から外れて所得税を納める必要がある。厚生労働省によると、障害があり、雇用契約に基づいて働くことが困難な人たちを事業所で職業訓練するしくみ「就労継続支援B型」で働く人たちの平均賃金は、月1万7031円(令和4年度)。103万円には遠く及ばない金額だ。 企業に定められた、従業員にしめる障害者の割合の下限「障害者の法定雇用率」は、2024年4月から引き上げられた。多様な人の可能性を伸ばせる社会のあり方がますます問われている。