「鳥肌が立つ、確定申告がある。」知的障害のある息子と歩んだでこぼこ道
眞喜子さんは、覚さんのことで褒められたのは絵日記以来2度目と感じ、心境の変化が生まれたという。 母・小林眞喜子さん 「半信半疑だったんだけど、作品に仕上げられるような子どもになれば良いな。これでいいのかなと思いました」
■人気作家へ──忘れられないポストカードと高級ネクタイ
覚さんの“作品”が初めて商品化されたのは、2012年のこと。障害のあるアーティストの作品をポストカードにし、全国のゆうちょ銀行や郵便局で無料配布するという企画に、覚さんの作品が選ばれたのだ。 覚さんの作品は好評で、2013年にかけて、2年連続でポストカードに起用された。 母・小林眞喜子さん 「娘たちや親戚や兄弟に配ったけど、『大事に使う』と言ってくれて。絵の商品化がこんなにうれしいかと思って。小さい頃の苦しみがあって現在があるけど、あのときの喜びは本当に忘れられないです」
ヘラルボニーとの出会いは、2016年。 ヘラルボニーの前身となる会社から、「ネクタイなどを手がける銀座の老舗テーラーで、覚さんの作品をデザインしたネクタイを作り、アート使用料を支払いたい」という打診があった。 当時の覚さんはすでに岩手県で個展を開催するなどアーティストとして活動していたが、この提案に俊輔さんは驚いたという。 父・小林俊輔さん 「知的障害者の稚拙な絵をネクタイにして、私の買えないような高い値段で売るって…大丈夫なのか?買う人がいるんだろうか?と思いました」 しかし、完成したネクタイを見て、両親の不安は吹き飛んだ。
母・小林眞喜子さん 「ネクタイのすてきさに驚いた。手に持ってみた時に、こんなすてきなネクタイにしてもらって本当に感動しましたね。これだったら高くても買ってくれる人もいるんじゃないかって」 2万2000円(税抜き)で販売したネクタイは完売。これをきっかけとして、現在までに覚さんの作品を起用したヘラルボニーの商品は約50点にのぼる。大企業からの指名で作品を制作することもあるほどの人気作家となったのだ。