日高屋飲み、サイゼリヤ飲み……なんでもありの「チェーン居酒屋」から「絞り込み型」へのシフトの訳
【3・飲酒人口の減少と高齢化】 「大学で教鞭を取って感じることでもあるのですが、大学生の3割から5割が普段からお酒を飲んでいない印象を受けます。お金もかかりますし、近年の健康志向もあります。コロナ禍をきっかけにやめた中高年も多いです。 今は、お酒を飲むということ自体がレジャー、嗜好品をたしなむ趣味のような一面が出てきていると思います。パチンコやディスコ、クラブ、カラオケ、ボウリング……さまざまな趣味と同じように、お酒を飲むことも今は楽しみのひとつになりました。 趣味だから、おひとりさまや、気の合う仲間2、3人で飲む、そういう流れはあると思います。ですから、趣味の仲間たち、登山やフットサル、合唱などそのような仲間と集団で飲むという機会のほうが、会社の飲み会よりも残っていると思います」 ◆チェーン店ヒットの4つの「P」 西川氏は、先にあげた日本社会の3つの変化に基づき、「チェーン店ヒットの4つの『P』」というキーワードでさらに理由を掘り下げてくれた。「P」とはパフォーマンス(performance)のPのことだ。 西川氏が提示する4つの「P」とは、 ・コスパ(コスト・パフォーマンス) ・タイパ(タイム・パフォーマンス) ・ヘルパ(ヘルス・パフォーマンス) ・マイパ(マインド・パフォーマンス) の4つ。 「一番重視されるのは、コスパですね。価格と量と質の兼ね合い。次にタイパ。みなさん、副業や趣味、家事、それからSNSなどいろいろなことで忙しい。そんななかでサクッと行って、サクッと飲んで食べて、サクッと帰る。 コロナ禍によって、職場の近くやターミナル駅、繁華街よりも近場のチェーンでサクッとという流れも生まれました」 西川氏は、日常でもよく聞くこの2つの「P」を基本としたうえで、さらに2つの「P」を追加する。 「3つ目の『P』の、ヘルス・パフォーマンス。たとえば鳥貴族が国産鶏にこだわっていたりするように、安い、おいしいだけでなく、少しぐらいは健康にも気を配りたい。牛丼にはサラダ、ラーメンライスは美味しいけれど、ライスは我慢して、せめてもやしか何か野菜を食べておこうみたいな(笑)、お酒を飲むとしても、健康のことを考えるようになった新しい流れが生まれました」 そして最後が「マインド・パフォーマンス」だ。 「簡単に言うと、ちょっと『気分が上がる』ということです。税金も保険料も電気代ガス代も上がったりしながら実質賃金は全然上がらない、そんななか、低価格でサクッと飲んで、ささやかながらも気分が晴れる。それがマイパです」 実際、いま人気の飲み業態を考えると、この4つの「P」を満たしているところが多い気がする。 よほど大きく社会が変わらないかぎり、こういった傾向はまだまだ続きそうだ。 取材・文:太田サトル ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。
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