にしおかすみこ、認知症の母の誕生日をダウン症の姉と料亭で祝う
11月18日に50歳の誕生日を迎えた、にしおかすみこさん。 認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との同居をはじめてから4年、先日は『ポンコツ一家2年目』の発売を記念して、にしおかさんとカリスマ介護士の高口光子さんとジュンク堂書店池袋本店にてトークイベントが開催された。そこでも自分だけではない、介護する人もされる人も「自分の意思」を尊重されることの大切さを改めて確認するイベントになった。 【写真】介護との話がお笑いライブみたい? カリスマ介護士とにしおかすみこさん にしおかさんは「ダメを言わない」「母や姉に聞く」ことを大切にしているという。そのためには待つ時間も必要だし、やりたいとなったら深夜にトランプをすることもある。高口さんはそんな「精神的に安心できる環境」が、認知症の進行を遅らせるなどの助けにもなるのだと語っていた。 そんなにしおかさんが1年前のエピソードを率直につづる連載「ポンコツ一家」39回は2023年12月、なかなか外出したがらない認知症の母をダウン症の姉とともに料亭につれて行き、誕生日のお祝いをしようとした日のエピソードを伝えている。お腹空かせて行こうね、というそばからカレーを食べていたり、朝9時から出かけようとするのを止めたり、母の奇抜なメイクに思わず笑ったりと、なかなかにぎやかな出発となった当日。 ようやく家を出たにしおかさんに待ち受けたものは。
タクシーに乗り…
タクシーに乗り、早速、運転手さんに「○○病院まで」という母を見て、寂しくなる。まるで別方向だ。目的地と、母の記憶と気持ちの軌道修正を試みながら、料亭の少し手前で降りる。 車の通れない細道を歩くと、程なくして老舗の門構えが見えてきた。 母が「あ、なんだあ。ここ、前に来たことあるー。近所の人と鰻食べたのよ。大広間でさ、大きなテーブルに向かい合って座ったの。それがさ、コロナ禍だからって透明な仕切りを置かれちゃって、刑務所の面会みたいだったの。話も盛り上がらなくてさ、せっかくの鰻も台無し。ホンットにつまらなかった」 その同行者、近所の人ではない。私だ。去年の夏にふたりで行った。とんだ記憶にすり替わっている。 玄関アプローチの石畳を3人で踏む。打ち水がしてあり、灯篭に赤紅葉とサザンカが奥ゆかしく色どりを添えている。のんびりと歩いているのに、あれ?ふたりがついてきていない。振り返ると、思ったより後ろにいる。姉が母の腕に手を絡め、姿勢を正し、まっすぐどこを捉えているのかわからない一点集中顔で、小股で右足を出して左足を揃える、左足を出して右足を揃えるを繰り返している。……バージンロードを歩いているのかい? 「何してんの?」静寂な空間に声が通る。