「SNSでバズる投稿」共通点は? 茂木健一郎が脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「SNSでのバズる投稿」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
先日、X(旧Twitter)で日常のふとしたことをつぶやいたところ、バズりました。通知が止まらず、自分事ではないような、急に芸能人になったかのような不思議な気分になりました。 SNSならではなのかもしれませんが、何気ないことが多くの人の関心を寄せたというのは、脳科学的に何か解明できないでしょうか?
<茂木の回答>
茂木:まずはバズり、おめでとうございます。私の周りでも、SNSでバズった、ごく普通の学生さんや会社員さんがいます。投稿を見せてもらうと、お書きになっているような、日常生活のふとしたことに関する投稿がバズっているようです。宝くじに当たったような気持ちになりますよね。 実はSNS上でバズる仕組み(バズ回路)というのは、脳科学で解明されているんです。2つ条件が満たされたときに、SNSでバズります。 1つ目は「自分が感動する、自分の心が動かされる」投稿。日々たくさんXの書き込みを見ていらっしゃると思うのですが、そのなかで、なぜか自分の心が動くものってありますよね。これがバズ回路の第一の要素です。 2つ目の要素は、「これはあの子に教えたら、絶対にあの子もおもしろいと思うよな」と思わせること。つまり自分の心が動くだけじゃなく、相手の心も動くと予想ができる。この2つの条件が満たされると、SNSでバズるということが脳科学的にはわかっているんです。 たとえば、僕は子どものときに蝶の研究をしていたので、今でも蝶に関するポストを見ると心が動くのですが、「これで心が動くのは僕だけだな」という投稿で、基本的にバズる要素を満たしていないんです。 バズるのは動物の何気ない仕草や、子どもが言ったおもしろいこと。逆に「これはとんでもない」と、みんなが怒るようなこと、つまり人間みんなに共通するようなことがバズるんです。 おそらくリスナーさんも、みんなが共感するようなことをお書きになったのではないでしょうか? みんなが「そうだよな」と思うようなこと、自分の心も他人の心も動く投稿をされていたからバズったのではないかと思います。 おもしろいのは、「バズらせよう」と狙っていくとダメみたいですね。狙ったわけじゃなく、結果としてバズったというのが(人気の投稿の)共通点のようで、狙っていると受け手がその意図を感じてしまうのでしょう。 だから、「こんなところに小さなきれいな花が咲いている」とか「こんなところにとんでもない人がいる」など、あたかも自分がそれを発見したような気持ちになれることが、SNS上で投稿をシェアする1つの要因になっているみたいですね。 これは狙ってできることではないので、いわゆる芸能人やプロの方だけではなく、一般の方がバズるようになっているのではないでしょうか。宣伝や広告が難しい時代だと言われていますが、その理由はこうしたところにあるのかもしれませんね。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」2024年3月23日(土)配信より)