水分補給のつもりが「逆に、水分を失うことに…」暑い季節、避けるべき飲み物とは?管理栄養士が解説
気温が高くなってくると、熱中症や脱水症状が心配です。こまめに水分補給して予防したいところですが、水分であれば何を飲んでもよいわけではありません。この記事では、水分補給として利用するのを避けるべき飲み物を、管理栄養士が紹介します。水分補給のつもりが反対に水分を失ってしまうものもあるので、この記事を参考にして適切な飲み物を選びましょう。 〈写真で見る〉水分補給のつもりが「逆に、水分を失うことに…」暑い季節、避けるべき飲み物とは? ■体から水分が失われる「お酒」 お酒が水分補給に向かない理由はふたつあります。ひとつは、アルコールの利尿作用により体内の水分が失われてしまうためです。 お酒をたくさん飲むと、トイレが近くなりますよね。お酒に含まれるアルコールには利尿作用、つまり尿の量を増やす働きがあります。これはアルコールが脳に作用し、抗利尿ホルモン(尿の排出を抑えるホルモン)の分泌が抑制されるためです。その結果、体内の水分が失われやすくなります。 お酒が水分補給に向かないふたつ目の理由は、アルコールの分解に水分が使われるためです。 体に取り込まれたアルコールは肝臓に届けられ、酵素の働きによりアセトアルデヒドに分解されます。さらに別の酵素により酢酸に分解され、筋肉などに届けられて、最終的には水と二酸化炭素になり排出されます。このアルコールの代謝の過程で水分が大量に使われるため、体から水分が失われやすくなるのです。 ビールやハイボール、スパークリングワインなど、暑い季節に冷たいお酒を飲むのはとても気持ちがいいものです。しかし、お酒を飲んでも水分補給したことにはなりません。反対に水分が失われてしまうので、お酒を飲むときは水も十分に摂取しましょう。 ■カフェインに注意したい「コーヒーやお茶」 カフェインにも利尿作用があるため、多く摂りすぎると尿量が多くなり体内の水分が失われてしまいます。 カフェインが多く含まれる飲み物としてよく知られているのは、コーヒーでしょう。ほかには煎茶やほうじ茶、さらにウーロン茶や紅茶にもカフェインが含まれています。これらのお茶の茶葉は、すべて「チャノキ」という植物の葉から作られています。上記のお茶に含まれるカフェインはチャノキに由来するものです。 お茶に含まれるカフェインの濃度はコーヒーの6分の1~2分の1程度で、あまり濃くはありません。しかし体へのカフェインの影響は個人差があるので、水分補給に利用するのは控えて、嗜好品として楽しむ程度にしておきましょう。 お茶のなかでも、麦茶は大麦から作られるためカフェインを含みません。水分補給に利用するなら麦茶がおすすめです。 ■糖質の過剰摂取につながる「清涼飲料水」 炭酸飲料やフルーツジュース、カフェオレなどの清涼飲料水を水分補給に利用するのは控えましょう。甘みのある清涼飲料水の多くは、かなりの量の糖質を含みます。毎日ペットボトルを1本、2本と飲んでいると、糖質の過剰摂取により肥満や糖尿病などにつながるでしょう。 また、毎日のように糖質の多い飲み物を大量に飲んでいると、「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」になるおそれがあります。糖尿病が進行したのと同じ状態になり、体重減少や倦怠感の症状が現れ、さらに昏睡状態に陥ることもあります。 熱中症対策にはスポーツドリンクが有効とされていますが、利用には注意が必要です。スポーツドリンクを飲むと、水分だけではなく汗で失われるミネラルを補えます。しかし、糖質も多く含まれるため、頻繁に飲むのは控えるべきでしょう。 炎天下で長時間体を動かす、スポーツに取り組むなど、大量に汗をかく人の水分とミネラルの補給にスポーツドリンクは有効です。しかし、日常的な水分補給にはおすすめできません。 水分不足は熱中症や脱水症状を引き起こし、さらに血液が濃くなることで脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。毎日の水分補給には、水または麦茶がおすすめです。暑い季節でも健康的に過ごせるように、適切な飲み物で水分を補いましょう。 【参考文献】 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」 厚生労働省 e-ヘルスネット「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」 公益社団法人 日本薬学会「チャノキ」 ライター/いしもとめぐみ(管理栄養士)
いしもとめぐみ