異例回答も。笑いと怒りと拍手が渦巻いた“タイガース株主総会”の一部始終
ここからも、まるで“タイガース酒場”のような展開が続いた。 「甲子園のアルプススタンドは暑いから屋根をつけろ」、去年の総会で出た「巨人カラーであるオレンジ色の阪神電車の特急電車の車体カラーを阪神のカラーの黄色に変えろ」というものから、違法駐車を減らすために車ではなく電車での来場をうながすテレビのCMに「かちんとくる。神経がさかなでされる」というクレームから「甲子園の内野席でビールの売り子が販売するビール銘柄がひとつしかないのはどういうことか」という細かい要望まで。次から次へと質問というか、株主の個人的な注文が出され続けて、その都度、百北氏が丁寧に「貴重なご意見を伺い、以降、検討課題にいたします」と汗をふきながら返答を続けた。 クライマックスは「この会場の音響設備が悪くて聞こえない。もっとよくして欲しいと最初に思いました」という前置きでスタートした、この6月で80歳になる男性の訴えだった。 「2005年より優勝がありません。いつ優勝してくれるんやろか、いつ優勝してくれるんやろか、と、シーズンが終わると落胆しているのが現状です、今もいい成績ではありません。私がファンを卒業するのは、もうすぐ、まぢかに迫っております。ぜひファンを卒業するまでに優勝して欲しい。優勝しないのは経営者の責任やと思います。タイガースの経営責任者に、決意と今後の抱負をぜひ、のべて欲しいのです」 経営責任という言葉が出たときに、会場からどっと笑いが起き、ざわざわが広がった。 角会長は、この回答者には、百北取締役ではなく「阪神電鉄の藤原会長お願いします」と、阪神電鉄の最高トップである藤原崇起代表取締役会長を指名した。これは、かなり異例の出来事で、過去にいわゆるオーナーがこの場で回答したことは一度もない。 現在の坂井信也オーナーは、昨年の6月で阪急阪神HDの取締役を外れており、阪神電鉄の取締役相談役の立場でオーナーを継続しているが、実質的にHD内での力はなく、すでに藤原会長、阪神電鉄の秦雅夫代表取締役社長へ実権が移っている。監督人事や経費に3億円を超えるような新外国人獲得やFA戦略などの大きな案件では、この2人のOK(取締役会での承認)がなければ、坂井オーナーの考えひとつでは何も決められないという状況に変わっており、今回、角会長が、わざわざ藤原会長を引っ張りだしたのには、そういう現状を世に知らしめる意味があったのだろうか。 その藤原会長は、余裕のある笑顔で、こう答えた。