異例回答も。笑いと怒りと拍手が渦巻いた“タイガース株主総会”の一部始終
阪急阪神ホールディングス株式会社の第180回定時株主総会が13日、大阪北区の梅田芸術劇場で行われ、株主から借金「2」でなかなか波に乗れない阪神タイガースへの不満と要望が殺到した。他企業では見られない、まるで喜劇のような阪急阪神HDの株主総会を取材してみた。怒りと笑いの裏側に阪神の今後の考えが透けて見えた。 株主総会は異例の謝罪から始まった。議長の角和夫代表取締役会長グループCEOは、開会の挨拶で、阪神の山脇光治スコアラーが盗撮容疑で逮捕された不祥事に触れ「被害にあわれた方に心よりおわび申し上げるとともに、株主、関係者の皆様に重ねておわび申し上げます」と謝罪した。 総会の質問も初っ端からタイガースだった。村上ファンドに企業買収されかけて困った阪神が“ホワイトナイト”の阪急にM&Aされて以来、株主総会は、もちろん阪急阪神の合同のものになっているが、そこでのタイガースへの株主からの要望や質問は、“風物詩”とも言える恒例のものになっている。しかも、チームの調子がよければ質問数は少なく悪ければ多い。ファン世情を如実に映し出すものとなっているから面白い。 だが、質問の一発目から阪神タイガース関連というのはなかなかない。交流戦の成績は4勝8敗で11位。株主の不満も溜まっているのだろう。 中年の男性の質問は、虎ファンにとって聖地であるライトスタンドに「赤や青とか、よそのファンが入ってくるので聖地を守りたい。ご配慮下さい」という無茶な注文から始まり、「席で立って応援していいものか」というマナー問題から、身障者専用の駐車場が確保されていない、という至極まっとうな要望に続けて、タイガースへの不満をぶつけた。 「タイガースは投手はいいのに打てない。2年前も総会である人がコーチがダメと同じような質問をしたところ、監督、コーチが信念を持って指導している、信頼していると、おっしゃっていたが、あれから2年たったが(打撃成績は)ダントツの最下位。これでは勝てるわけがない。外国人を高いお金を払って連れてきても全く打てない。若い選手が出てきて喜んで応援歌ができるが、すぐ打てなくなる」 “ポンコツ”の斎藤佑樹からは大量得点を奪ったが、2点以上取れない貧打にずっと苦しめられ、チーム打率、得点、本塁打の3部門は、セ・リーグの最下位である。株主は、なぜ勝てないかの原因をよくご存知のようである。 答えたのは、阪神の揚塩健治球団社長ではなく、阪神電鉄のスポーツ・エンタテインメント事業部の百北幸司取締役だった。これまでは百北氏が阪急阪神HDの取締役だったため、順列的に上にある百北氏が答弁に立ったものだが、タイガースには、キャンプに1、2日、陣中見舞いに訪れる程度のかかわりの人だ。そういう席では、コーチなどと熱心に野球談義をしているが、タイガースの内情については、揚塩社長ほどには知らない人物が返答するのである。 百北氏は、立ち上がっての応援に制限を設けていないことなどを説明した上で打撃不振のチームについて「一昨年、ご指摘をいただきましたときに回答をしたのも私で、同じような答えになってすいません。監督、コーチは信念を持って取り組んでいますし、我々も信用しております。精一杯練習に励み、強い気持ちを持って、今、結果が出ていない選手も、今後、やってくれると信じております。ペナントレースは、まだまだ続いていきますので、引き続き応援をお願いします」とマニュアル通りの模範回答をした。