世帯年収1,310万円の30代夫婦、6,000万円の住宅ローン審査に落ちて呆然…銀行員から「こっそり提案されたこと」、その後の顛末【FPが解説】
問題は契約した家のこと
離婚するとなったら、わざわざ郊外に家を買う必要はありません。それどころか、別れた夫の実家の近くに1人で住むなんてありえません。 しかし自宅はすでに基礎工事が始まっています。キャンセルはできるのでしょうか。怖くて担当営業マンには言えませんでした。 FPに依頼し、恐る恐るキャンセルの手続きを訊いたところ、こんな回答でした。 ・着工しているため、違約金というよりも損害賠償をしなければならない ・建材費や人件費だけではなく、本来メーカーが得られていたはずの利益も弁償する必要がある ・銀行はすでに融資が実行されているためキャンセルは不可能。一括返済を求められる そして結論としては、 ・このまま家を完成させ、すぐに売却するか賃貸物件として貸し出すほうが損害は少ない ・賃貸にする場合には住宅ローンを事業ローンへ借り換えする必要がある(金利は3倍近く高くなり返済期間も短くなる) ・賃貸にした場合はローンを抱えているため、今後あらたな住宅ローンを借りられなくなる ・夫の不貞行為によって損害を受けているので、不倫相手の女性への慰謝料の請求額に若干反映できるのかもしれないが、300万円以下である ・新築後すぐに売却しても、オーバーローンとなり、住宅ローン分を相殺できるのがせいぜいで、その場合は自己資金の1,000万円は戻らない損失となる ということでした。
売却と賃貸、どちらが「損害」を最小限にできるのか
売却するか賃貸にするかを比較検討したところ、賃貸は維持費、税金、金利、火災保険料、空室リスク、将来の解体費用を考慮すると利益はゼロかマイナスになる可能性があることがわかりました。 郊外であるため家賃も高くできません。住宅ローン控除も適用になりません。さらに返済期間が短くなり金利も高くなるため、年単位でのキャッシュフローはギリギリです。 次に、売却することを考えると、おそらく住宅ローンの元金程度の金額でしか売れないことが予想されます。しかも売れるまでのあいだ、火災保険や税金などの維持費がかかります。 不倫相手の女性からの慰謝料300万円、夫からの離婚慰謝料500万円が入るとすれば、自己資金の一部になるため、損害は最小限で抑えられるかもしれません。しかし慰謝料の額が最大であればの話です。また、実際には居住しないため住宅ローン減税の手続きはできません。 その後、ふたりは離婚の手続きをしましたが、夫は多重債務者となっていて離婚慰謝料を支払う余裕がありませんでした。公正証書を作成して分割払いをすることにしました。不倫相手の女性もまた慰謝料を支払うだけの貯えはなく、やはり分割払いをすることに。 どちらも社内に不倫の事実を知られ、退職することになったようです。そうなると慰謝料の支払い、またはその遅延に伴う差押えの手続きも困難になる可能性があります。 いずれを選択するかはまだ決定していないものの、妻Kさんは自分が受けた理不尽さに怒りが収まりません。しかし、最初の不倫事件を大目に見たこと、住宅ローンの審査がNGだったことも不問にしたことなど、重大な局面で話し合いをしていなかったことも今回の顛末の遠因となっていることは否めないでしょう。