【海外トピックス】中国最新自動車事情 “モールでクルマもお手軽ショッピング”
中国ブランドとの競争に晒されて欧米メーカーは苦戦
上述の2社に比べると、VWが資本出資した小鵬はやや苦戦しているようです。モール内の展示場も狭いスペースに何台も詰め込んだ印象で、中型セダンの「P7」は、36ヶ月ローン「ゼロ金利」を展開しており、熾烈な競争が続く20万元台のEVセダン市場で苦戦しているのでしょう。一方、最新のミニバン「X9」は、今年1~3月の販売台数で理想の「MEGA」や第一汽車の「奔騰NAT」を倍近く上回りセグメント首位と好調のようです。 こうした新興EVメーカーを追いかけるのが、国(省)有の自動車メーカーで、欧米や日本の自動車メーカーとの合弁事業に加えて、NEV専売の別ブランドを次々に立ち上げています。例えばボルボの親会社である吉利汽車は、Polestar、Zeekr、Lotus、Lyco &Co.などのブランドを多数展開しています。また、長安汽車、東風汽車、広州汽車などもAVATR(阿維塔)、Voyah(嵐図)、AION(埃安)といった新ブランドを続々と立ち上げて、上級NEV市場に打って出ています。 こうした中国ブランドとの競争に晒されて、欧米のメーカーは苦戦しています。例えばVW ID.3はドイツでは39,995ユーロ(680万円)からですが、このモールで展示されていたモデルはわずか12万5000元(275万円)だと店員から聞いたときは一瞬耳を疑いました(中国のホームページでは16万3888元~とあるので値引き後の価格でしょう)。また、新型のNIO ET7(100kWh電池仕様)は48万6000元と発表されましたが、これはメルセデス・ベンツEQE(96kWh電池)の47万8000元と同等です。ET7の方がサイズ(5.1m)も大きく、航続距離(1050km)などの性能も上回っているので、メルセデスが苦戦を強いられるのも無理はありません(EQSは88万元もします)。
中国メーカー車の方がコスパが良い
前出のHさんによると、中国の消費者には「コスパは中国メーカー車の方が良い」という認識があり、輸入車を買うのはクルマをよく知らない人という印象すらあるとのことです。Hさん自身は、2年前に買ったテスラモデルYを所有していますが、音声認識などがスマホの方が優れているので、正確なナビゲーションを求めるときはテスラの車載ナビではなくスマホのナビを使うとのこと。大きなセンターディスプレイはタッチして操作するのではなく、ほとんどの場合音声で入力、コマンドしていました。 また、モーターショーのBYDブースで、本社広報ディレクターの黄さんに対して、「これまで中国の消費者は長いことビュイック(GM)やVWなどのブランド車に親しんできたはずだが、それらのブランドに対する愛着はないのでしょうか」と質問をぶつけてみた所、「GMはEVのイメージがなく、VWは(ソフトウェアの)アップデートのスピードが遅い」という印象だそうです。中国の消費者は、ネット上に溢れる車情報をしっかりと検討して、スペックや評判を比較し、最も良いと思う車種を購入するとのこと。筍のように林立するNEVメーカーも、「血の出るような(bleeding)マーケットだとわかっているが、それでも各社は自分たちが最高の製品を出せると考えて挑んでいる」という話でした。14億の人口を抱える中国では、そのような過酷な競争は珍しくないのかもしれません。