飲み込む力は握力とも関係している⁉ 誤嚥性肺炎を予防するために行いたいのは…【40代・50代から知っておきたい!「誤嚥性肺炎」⑩】
低栄養に陥らないように注意
「私のクリニックを受診する患者さんたちのお話を聞くと、皆さん1日3回の食事をきちんと食べていない人が少なくありません。また、一人暮らしに限らず、『孤食』の人が増えていて、簡単にすませてしまいがち。すると栄養バランスが偏って、低栄養に陥りやすいんです」 特にタンパク質が不足すると、筋肉量が減ってしまう。そこで、タンパク質の摂取量を手軽に増やせる方法として、西山先生は「卵かけご飯」を患者さんたちにすすめているのだそう。 「更年期以降に急激に体重が減ると、将来的にサルコぺニア(筋肉減少)やフレイル(心身が衰えて要介護の一歩手前の状態)のリスクが上がります。筋肉量が落ちると、嚥下機能が低下して、健康寿命が短くなる心配がありますから。口から食べて栄養摂取できるように、喉の筋力をキープしましょう。脳の機能や認知力を保つためにも、無理なダイエットはしないほうがいいですね。ややぽっちゃり体型のほうが、喉の若さを保つことができます」
しっかり噛める歯をキープ
加齢とともに虫歯や歯周病など、歯のトラブルが起こりやすくなっていくが、歯の健康を守るのも誤嚥予防対策のひとつ。定期的に歯科検診を受けることが大切だ。 「『部分入れ歯がグラつく』など歯のトラブルがあると、食事をうまく咀嚼できずに、無理やり飲み込んでしまい、むせたり誤嚥するリスクにつながります。食べ物の塊を丸飲みして窒息する危険もあるので、歯の不具合を放置してはいけません。 また、感染症予防、口腔衛生のためにうがいをする際、うがい薬を多用すると刺激が強いので、水か緑茶でうがいするとよいでしょう」
お酒の飲みすぎは嚥下反射を鈍らせる
もしも、お酒を飲んでいるときにむせやすいと感じたら、脳が判断ミスをして、嚥下反射にエラーが起きているのかもしれない。 「嚥下反射は生まれながらに備わっているすばらしい機能ですが、お酒を飲みすぎて酔っぱらった状態になると、脳の判断力が低下して、反射が鈍ってしまうことがあるのです。深酒して嘔吐すると、逆流した食物を誤嚥することもあり危険です。深酒は慎みましょう」 通常は「ごっくん」と飲み込んだ瞬間に嚥下反射が起きて、気管に“喉の防波堤”がされて、食べたり飲んだりした物が食道に流れていく仕組みがあるのだが、実はこの反射運動はわずか約0.5秒の早ワザ。深酒をして酔っぱらった際、その0.5秒の間にエラーが起こって、誤嚥を招くことがあるのだ。 むせやすいと感じたときは、「これから飲み込むぞ」と意識して飲み込もう。意識することでむせにくくなるが、まずは嚥下反射が鈍るまで飲みすぎないことが大事だ。