歴史ある教会がこんな姿に。稚拙極まりない修復に「文化財に対する攻撃」と遺産保護団体が激怒
スペインのソリアで1725年に建てられた教会、エルミタ・デ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ミロンはスペイン政府によって保護されている教会だ。同教会がこのほど修復されたが、変わり果てた姿になってしまったとガーディアンが報じた。 バロックとロココ様式を取り入れ、厳かな雰囲気だった室内は派手な色のペンキが塗られ、天使像は拙い修復で漫画風になってしまっている。これを見た地元の遺産保護団体ソリア・パトリモニオはX(旧ツイッター)で、左に修復前、右に修復後の写真を並べ、「彼らはエルミタ・デ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ミロンに何をしたのか?」という怒りのコメントを投稿した。 そしてソリア・パトリモニオは地元メディア、エル・コンフィデンシャルの取材に対して、歴史的建造物の修復に通常必要とされる事前調査が行われずに工事が行われたと考えていると話し、「このような再塗装は、遺産的価値のある建物に適用される適切な介入方法から外れている」と主張した。 スペインの修復家・保存修復家専門家協会(Acre)も今回の件に怒っており、フランシスコ・マヌエル・エスペホ会長は強い口調で、「これは修復でも保存修復でもない、文化財に対する攻撃だ」と述べた。Acreは声明も発表し、このプロジェクトは作業を始める前に当局の審査を受けるべきであった事と、地方自治体や政府が専門の修復家や保存修復家のチームを持つ必要性を訴えた。教会のあるカスティーリャ・イ・レオン州政府も、この教会は十分に高いレベルの遺産保護を受けていないためにこのような結果になったと話している。 同教会を管理しているオスマ・ソリア教区の広報担当者は今回の件について、「私が言えるのは、教会の工事は必要な許可を得て行われたということ、そして、その結果が気に入る人もいれば、気に入らない人もいるということだけです」とコメントした。 スペインの教会では、度々とんでもない修復が施され話題となっている。最も有名な例では、2012年、北東部ボルハの教会のキリストのフレスコ画を当時82歳だった素人の女性が修復した結果、「サルのキリスト」と世界から失笑を買った。2019年には、ナバーラ州エステージャのサンミゲル教会の木製の聖像を地元の工房が修復した結果、本来の姿は失われてまるでアニメ映画『トイ・ストーリー』の登場キャラクターのようになってしまった。
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