キヤノン「EOS R1」機能編レビュー 基本性能や注目の新機能をまとめてチェック
■カメラ内アップスケーリングやブレ・ボケ画像判定も搭載 そのほかの機能として忘れてはならないのが、「カメラ内アップスケーリング」。EOS R5 Mark IIにも搭載されている機能ですが、それよりも画素数の少ない本モデルではより実用的に思えます。縦横の画素数はそれぞれオリジナルの2倍となり、2400万画素の画像が9600万画素の画像に。単純に画素数を増やしただけであれば、ジャギーが目立つようになるだけで解像感の向上は期待できませんが、本機能は独自のディープラーニング技術を用いた補間処理を行い、解像感を向上させています。イメージセンサーを微動させ同時に複数回のシャッターを切り高解像度の画像を得る機能と異なり、本機能は記録されている画像(JPEGまたはHEIF)に対して処理を行うため、どのような被写体でも対応できるのが強みです。単にパソコンでの閲覧だけでなく、インクジェットプリンターでプリントを行う時も効果的ですので、お気に入りの画像は撮影後にこの処理を行なってから、パソコンやHDDなどに保存するとよいでしょう。 ユニークに思えたのが「ブレ・ボケ画像判定」。その名のとおり、ブレとボケの発生を自動的にカメラが確認するもので、緩め/標準/厳しめの3つのレベルから選んで行います。微細なブレやボケは液晶モニターを見ただけでは判定しづらいこともありますが、この機能を使えば一発で発生状況を知ることができます。マスコミ関係など、撮影現場から編集部などに通信で画像を送るような状況では使用頻度の高い機能のように思えました。事前に「ブレ・ボケ画像判定」を使って確認したうえで画像をセレクトしておけば、無駄なカットを送ることもなく、編集部でも写真セレクトの手間が省けスピーディな対応が可能となるからです。その証拠と言うわけではありませんが、本モデルにはEthernet用RJ-45端子を備えるなど通信環境に隙はありません。もちろん、私たちが出先などで撮影した画像をチェックするときも便利そうです。 今回作例撮影では、さまざまな被写体をEOS R1で撮影しましたが、とても快適で撮影に集中できました。特に、動体撮影では電子シャッターでの40コマ/秒の連続撮影に加え、シャッター機構による振動の発生がなく、ブラックアウトフリー機能により被写体が追いやすく思えます。さらにトラッキング機能や被写体認識機能、視線入力、アクション優先機能などにより動体の撮影でもピントを大きく外すことはなく、写真が上手くなったような気分にしてくれるほどです。露出なども含め失敗の許されない撮影では、きっと心強い味方となることでしょう。何度も記していますが、映像エンジンやAF関連の機能などはEOS R5 Mark IIと同じですが、撮影時の信頼感や安心感といったものは本モデルが凌いでいますし、フラグシップらしいキレのよい操作感は撮影していてとても心地よいものです。 ユーザー側に与えられた課題としては、搭載する機能を理解し、撮影条件や被写体などに合わせて正しく使用(設定)できるか否かかもしれません。素晴らしい機能が搭載されていても、使わなかったり、使っても間違った設定をしてたり、あるいは使い方を理解していないと意味をなさないからです。フィルム時代はシンプルな機能しかなかったカメラですが、デジタル一眼レフなって増え、さらにミラーレスとなってその内容の多さ、複雑さは増してきています。本機も、これまで解説してきたとおり例外ではなく、搭載する機能を熟知することが、このカメラを使いこなすための第一歩のように思えます。ようやく登場したEOS Rシステムの“1”。これまで同様キヤノンの顔となることは間違いなさそうです。作例は次回の画像編で紹介します。
大浦タケシ