震災乗り越えた灘五郷のシンボル『菊正宗』看板、71年で幕「変わる神戸の景色、ちょっとセンチな…」
酒造大手・菊正宗酒造(神戸市東灘区)は、社名が入った鉄塔看板を12月に撤去する。1953(昭和28)年から71年間、日本有数の酒どころ「灘五郷」の一角を彩るシンボル的存在だった。 【画像】菊正宗の鉄塔看板、71年の歴史に幕 高さ48メートルの3面からなる鉄塔は、 1995(平成7)年の阪神・淡路大震災でも被害がなく、 2011年まで“菊正宗”の字体に赤いネオンサインが点灯していた。 しかし、昨今は気候変動が著しく、老朽化により強風などで倒壊するおそれがあることから、安全性を最優先して撤去することにした。 神戸市東灘区出身の60代の男性は、現在は大阪市内に住む。「神戸の酒蔵は数多いが、こうした鉄塔は珍しく残してほしかった。灘五郷のシンボルのひとつが消えるのはとても残念。古くからある工場の鉄塔看板といえばこの形。震災を経て、神戸の景色が変わるのは仕方ないとはいえ、センチメンタルな気分になる」と話した。 灘五郷では2018年以降、白鹿、白鷹、大関、日本盛(いずれも兵庫県西宮市)の各ブランドロゴを表現した大看板が相次いで撤去された。 2018年9月、25年ぶりに非常に強い勢力で近畿の沿岸部を中心に甚大な被害をもたらした台風21号の影響は大きい。 最大瞬間風速50m、潮位は大阪で329cm、神戸で233cmと、過去最高を記録した。 解体後、文字部分の保存を望む声があがったが、同社によると、保管場所の確保などが難しいという。 菊正宗酒造は「広告塔としての一定の役割を果たし、皆さまに愛されてきた。寂しくなるが、今後もより一層、愛される酒造りにまい進していきたい」とコメントしている。 ・・・・・・ あれから30年。菊正宗酒造本社の脇を流れる住吉川は整備され、近隣にはマンションが立ち並ぶ。 変わりゆく景色…取材に答えた男性は、幼いころ「すぐそこにあった」看板を思い出し、ふとまぶたを閉じたに違いない。 老朽化と危機管理、被災地・神戸だからこそ、この節目を前に心を決めた。 必ず、また新しい景色が歴史を紡いでくれると信じて…
ラジオ関西