ブラウン博士も驚く速さ? エレクトロジェニック DMCデロリアンへ試乗 時速88マイルは余裕
世界で拡大する電動パワートレインへの置換
複雑な内燃エンジンやトランスミッションを、クリーンでシンプルな電動パワートレインへ置き換える、エレクトロモッド・ビジネスは各国で拡大中。必要な予算を準備すれば、車庫に眠るクラシックカーをバッテリーEV化できるようになった。 【写真】ドクも驚く速さ? エレクトロジェニック・デロリアンDMC-12 電動化されるクラシックたち (115枚) そんな新市場を牽引する1社が、英国のエレクトロジェニック。商用車の電動化でスタートしたが、COVID-19によるロックダウンを機に、事業拡大へ踏み切ったという。 同社を創業し、現CEOを務めるスティーブ・ドラモンド氏へお話を伺う。「2020年のロックダウン直前に、新規に10名を採用していました。ところが、計画していた消費者向けの商用車ビジネスは、突然実現が難しくなってしまいました」 「そこで雇用を守るため、事業を紹介したウェブサイトを整備しました。すると、われわれと夢を共有してくれる人が、次々に現れたのです」 AUTOCARでは度々ご紹介しているが、レストアが得意なルナズ社やエヴァラティ社なども、クラシックカーをエレクトロモッドしている。既存の電動パワートレインを巧みに組み込むという点で、事業は似ている。 だがエレクトロジェニック社は、レストア自体は手掛けていない。事業は大きく4つにわかれており、1つは軍事関連。ランドローバーの電動化を、英国軍と協働して進めているという。また、自動車メーカーとのOEMにも携わっている。
エンジンがあった場所にモーターとバッテリー
3つ目が、電動パワートレインのキット販売。これは、創業時のビジネスの延長上にある。BMCミニやジャガーEタイプ、ランドローバーのオーナーを対象に、エレクトロモッド用の部品をセットで提供しているそうだ。もちろん、マニュアルも付いている。 そして4つ目が、完全なオーダーメイド。これは先述の他社も請けているが、要望に応じて特定のモデルを電動化してくれる。「ビスポーク(オーダーメイド)は、お客様の夢の実現といえます」。とドラモンドが話す。 同社は、ソフトウエア開発も得意なことが大きな強み。単なるパーツメーカーではないことを、彼は強調する。「わたしたちは特別な目的に合わせて、電動パワートレインを独自に製造できるんです」 そんなエレクトロジェニック社で、夢を実現してもらったDMCデロリアンのオーナーがいる。グレートブリテン島中南部、ビスター・ヘリテージのサーキットで、筆者は幸運にもその正夢を体験させていただいた。 オリジナルのデロリアンに載っていたのは、プジョーとルノー、ボルボの共同で開発されたPRV V型6気筒ユニット。実のところ、これは優れたエンジンとはいえなかった。ゆったり快速で通勤するという、当初の目的には合致していたが。 パワートレインを置き換える際、可能な限りオリジナル状態を保つことへ、エレクトロジェニック社は配慮している。このデロリアンでも、ボンネットを開くと従来どおり荷物を詰める。駆動用モーターとバッテリーは、V6エンジンがあった場所に収まる。