2024年、PC業界の総括と来年の展望。提供遅れる「Copilot+ PC」は再離陸できるのか
テストに遅れが出ている大きな理由はセキュリティ対策
他方で、リコールは「産みの苦しみ」にも直面している。 本来はCopilot+ PCの目玉機能として、6月の発売時からテストが開始される予定だった。しかし、記録するデータの扱いやセキュリティ上の懸念から、6ヶ月遅れの2024年12月になり、ようやくテスト公開がスタートしたところだ。現状はWindows Insiderに向けた「テスト公開」扱いであり、正式公開時期は定められていない。冒頭で「ようやく評価できる状態が整ってきつつある」と言ったのはそういうことだ。 紆余曲折を経て公開されたリコールは、強固なセキュリティ対策とセットになっている。 リコールで検索をする時には、Copilot+ PCに搭載された生体認証機能である「Windows Hello」での認証が必須となった。データが暗号化されており、PCの利用者はもちろん、企業内のPC管理者やWindows自体からも中身にアクセスできない。利用者がWindows Hello認証を使って「本人である」と確認できた時のみ使える。 記録する期間や対象アプリを設定することもできる。例えば「ショッピングサイトでは記録しない」「特定のアプリでは記録しない」といった設定もできる。そもそも、クレジットカード情報やID・パスワードは、AIが自動認識して「記録しない」仕組みだ。 これらの仕組みは、筆者には十分妥当な仕組みに思える。一方で、プライバシー懸念を払拭できない人が使わなくてもいいよう、利用者側で明示的に「機能をオンにする」作業が必須だ。また、企業向けのWindows 11には現状機能が搭載されていない。 課題もある。特に面倒なものの1つは「セキュリティ上問題がないタイミングにも関わらず、しっかり記録されない瞬間がある」ということだ。 リコールは一定時間に画面の状態を「画像として記録」する仕組みであり、動画のようにすべての画面表示を記録しているわけではない。だから、記録のタイミングが悪いとリコールに情報が残っていない……ということもあり得る。 AIによって画像の内容を検索可能にするという仕組み自体はかなりうまく機能している。時に文字列検索の精度は驚異的だ。一方で、「求めていた情報を見ていたタイミングが、たままたリコールには記録されていなかった」ということもあるわけで、現時点で100%信頼しきって利用するのは難しい。