2024年、PC業界の総括と来年の展望。提供遅れる「Copilot+ PC」は再離陸できるのか
リコールの活用には「NPUが必須」
前述のように、Copilot+ PCにはNPUが搭載されている。NPUはAIの処理を効率的に行う専用コアで、CPUより推論が速く、GPUより消費電力が小さい。Copilot+ PC向けのWindows 11にはNPUを使うことを前提とした機能が複数搭載されているが、現状、それらの機能はNPUを搭載しないPCでは使えない。 なぜクラウド利用型のAIでは駄目なのか。多くのAIはクラウドで動作しているが、「クラウドにプライベートな情報を転送するのは憚られる」という声は大きい。しかし、少なくとも端末内にプライベートな情報を置いておけるなら、クラウドを利用するよりプライバシー面での安心感はあるだろう。そこで求められるのが、クラウドに依存せず端末内でAIを完結させる「オンデバイスAI」だ。 リコールはPCの中で起きたことを逐一記録していく。そこには当然、そのPCを使った人のプライベートな行動がそのまま記録されていると言っていい。この情報をクラウドに記録して検索可能にするのは、セキュリティ上もプライバシー上も好ましくない。そのため、AIによる検索をオンデバイスAIで行い、情報がネットに出て行かないようにすることで、プライバシー上の懸念を払拭しているわけだ。こうしたやり方は、スマートフォンなどにおけるAI活用でも基本の1つ。そう考えると、これからのIT機器にNPUが必須になることも納得しやすい。 ファイル検索や個人的なAIとのコミュニケーションなど、プライバシー維持が必要な機能は多々ある。今後のWindowsでそうした機能を強化していくには、AIを効率的に処理し、オンデバイスで動作するNPUの存在が重要になってくる。 また企業向けには、オフィスソフト・パッケージであるMicrosoft 365での「Copilot機能」について、NPUで処理する形を選べるようにしていくことも発表されている。ネットが使えないところでも同じような処理能力を求めるなら、こちらも必須だ。特に企業向けPCの買い替えでは大きなニーズとなっていくだろう。 一方で、NPUはたしかに効率的にAIを処理できるが、処理能力自体はGPUの方が高い部分もある。おまけに、ゲーム用にNVIDIAやAMDの高性能GPUを搭載している場合、AI処理をGPUに回したほうが処理速度は上がる。その分コストと消費電力も高くなるのだが……。